ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
世界の税金はどうなっているのか 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
矢内一好(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
人手不足を解消し、質の高い医療提供を続けるために
医療の世界は、過去100年で大きな変化を遂げてきました。かつては一人の医師が幅広い診療科を担当していた時代もありましたが、技術革新や専門医制度の導入により、現代の医療は質・精度ともに飛躍的に向上しました。
特に医療技術の進化は著しく、診断技術や治療法の革新が医療の質の向上に大きく寄与しています。例えば、CTやMRIといった画像診断技術の発展により病気の早期発見、精度の高い経過観察が可能となり、かつては治療が困難だった疾患にも対応できるようになりました。
また、抗生物質やワクチンの開発は感染症による死亡率を大幅に低下させ、外科手術や放射線治療の進歩により、治療の精度も飛躍的に高まっています。21世紀に入るとモノクローナル抗体を利用した新薬が続々と開発され、自己免疫疾患、アレルギー疾患、がん治療などに新たな地平を開きました。さらに、iPS細胞を活用した技術革新は再生医療の分野に大きな期待をもたらし、医療の未来を大きく切り拓こうとしています。
医療の質を維持・向上させるためには、医療技術の進歩だけでなく、医療機関それぞれが経営を健全に保ち、地域において安定した医療を提供する体制の確立が求められます。しかし、医療費の増加による財源の圧迫、診療報酬のマイナス改定、さらには少子化に伴う労働力の不足など、医療機関を取り巻く環境は非常に厳しい状況にあり、早急な対応が必要です。
なかでも、人手不足は特に深刻な問題であり、医療の質に直接的な影響を及ぼすことから、その解決が急務となっています。医療業界でも、求人情報をインターネットやスマートフォンアプリに掲載するなど、採用活動が活発に展開されています。とりわけ人材確保が急がれる看護師については、多くの病院が特設サイトを設けるなどして、工夫を凝らした情報発信を行っています。既存スタッフのインタビュー記事を掲載することで、その人柄や職場の雰囲気を伝える取り組みも進んでおり、求職者が自分に合った職場を見つけやすくなる効果が期待されています。
ただし、採用活動はあくまでも人手不足解消の入り口にすぎません。求職者にとって本当に重要なのは、採用後に働く職場の環境や組織の文化です。病院側としては、採用した人材が長く勤務できるよう、職場環境の整備や働きやすさの向上に継続的に取り組む必要があります。
若手を育てる組織体制の構築
弟が院長を務める急性期病院は、当初より慢性的な医師不足という課題を抱えていました。地方で新たに医師を採用するのは決して容易ではありません。そのため、まずは医師を支える優秀な若手医療従事者を育成することで、医療体制の強化を図る方針を立てました。特に、医師の指示を直接受け、患者と最も近い距離にいる看護師の育成に重点をおきました。
この医療スタッフ育成の取り組みにおいて、急性期病院で中心的な役割を果たしたのが、父の代に看護師として勤務していた前管理部長です。彼女は准看護師としてキャリアをスタートさせましたが、より高い専門性を求めて正看護師の資格を取得。当時としては前例のない進学希望でしたが、彼女の強い意志が当時の院長であった私の父の心を動かし、最終的にはその進学が認められました。
かつては、大都市の国公立病院では正看護師が中心であった一方、地方の私立病院や診療所では准看護師が多く配置されるなど、地域や施設の規模によって明確な区分が存在していました。これは、正看護師を養成する高等看護学校が都市部に集中していたことや、短期間で実践的なスキルを習得できる准看護学校が地方に偏在していたことが主な要因です。当然ながら、両者の間には待遇面でも大きな差がありました。
しかし、1996年に当時の厚生省が「21世紀初頭の早い段階を目途に看護婦養成制度の統合に努める」と提言したことに加え、少子化の進行も相まって、准看護師学校は急速にその数を減らしていきました。
こうした時代の流れを受けて、前管理部長は「今後、准看護師の確保は難しくなる。ならば、自分たちで正看護師を育てればよい」と方針を転換しました。彼女は意欲のある若手准看護師はもちろん、進学に消極的なスタッフにも積極的に声をかけて、正看護師の資格取得を勧めました。彼女は同じ志を持つ看護師の輪を広げていったのです。
こうして多くの准看護師が正看護師として成長していくなかで、ほかの医療スタッフにもスキルアップへの意識が芽生え、病院全体に「育成文化」が根づき始めました。前管理部長のリーダーシップのもと、看護師たちは自主的に学び、外部研修や院内教育に積極的に参加する体制が整備されていきました。急性期病院と慢性期病院それぞれの現看護部長二人も、現場で働きながら正看護師の資格を取得。病院の看護部門における中核を担う管理職となり、後進の指導にあたっています。
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
