(※写真はイメージです/PIXTA)

国外に資産を保有する日本人は、実際にはどれほど存在しているのでしょうか。国税庁が公表した最新の国外財産調書では、申告総額が8兆円を超えたとされています。しかし、国際的な金融口座情報の自動交換が進む現在、この数字をそのまま実態と受け止めてよいのかは疑問が残ります。CRS(共通報告基準制度)によって把握される海外口座情報の規模、アメリカが制度に参加していない現実、そして自主申告に依存する税制の限界──。確定申告シーズンを迎えたいま、国外財産をめぐる「申告数字」と「実態」との乖離を検証します。

富裕層課税と税務当局の限界

筆者は、国外財産調書で公表されている数字は、実態の100分の1以下ではないかと見ています。今後、富裕層課税がさらに強化されれば、資金が一層海外へ流出する可能性は高まります。実際、イギリスなどでは富裕層課税の強化を背景に、富裕層の国外移住や資産移転が進んだ事例が確認されています。

 

しかし、日本の税務当局が把握できる海外金融情報には限界があります。特にアメリカの金融機関に関する情報はほとんど入ってこず、税務署は今なお、本人の自主申告に大きく依存せざるを得ない状況です。

問われるのは制度の実効性

確定申告シーズンは、単に納税を促すための期間ではありません。日本の税制が抱える構造的な限界や、課税の公平性がどこまで確保されているのかを改めて問い直す時期でもあります。

 

国外財産をめぐる「見えない海外マネー」の存在は、今後、富裕層課税や国際課税の議論が進む中で、より重い政策課題として浮上してくるでしょう。申告制度の実効性をどう高めるのか。その答えが示されない限り、「8兆円」という数字が持つ違和感は、今後も消えることはなさそうです。

 

 

奥村 眞吾
税理士法人奥村会計事務所
代表

 

 

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