CRS制度が突きつける現実
国外財産をめぐる議論を語るうえで欠かせないのが、CRS(共通報告基準制度)です。
CRSは、租税回避を防止するためにOECDが策定した国際的な金融情報交換制度で、銀行、証券、保険などの非居住者金融口座情報を毎年12月末時点で集計し、世界155ヵ国以上の税務当局が相互に交換しています。
2018年から本格運用が始まり、シンガポール、香港、スイス、ケイマン諸島、バハマ、パナマなど、かつてタックスヘイブンと呼ばれた地域の多くも参加しています。唯一、この制度に参加していない主要国がアメリカです。
CRSによって把握されている日本人個人の海外口座情報は、200万件を優に超えるとされています。それにもかかわらず、国外財産調書の提出者は1万4,000人余りにとどまっています。この数字の乖離は、国外財産調書の申告額が実態のごく一部にすぎない可能性を強く示唆しています。
「申告されない海外預金」への疑問
国税庁の公表では、海外預金の総額は8,817億円とされています。
しかし、ハワイだけでも日本人名義の口座が数万件存在すると言われており、シンガポールでは何十万件もの日本人名義口座があるとされています。こうした実態を踏まえると、海外預金が1兆円に満たないという数字には大きな違和感があります。
さらに、CRSに参加していないアメリカの存在が、この問題をより複雑にしています。アメリカには毎年3万人を超える日本人留学生がおり、ハーバード大学やスタンフォード大学などの名門大学では、授業料や寮費だけで年間1,500万円前後が必要とされます。その費用を賄う家庭の海外口座残高が、5,000万円以下に収まっているとは考えにくいでしょう。
