「社会保険料を減らせ!」「消費税を下げろ!」…国内議論の陰で黙々と〈日本〉と〈海外〉の保険料をW負担する「海外勤務者」の苦悩【国際税務の専門家が解説】

「社会保険料を減らせ!」「消費税を下げろ!」…国内議論の陰で黙々と〈日本〉と〈海外〉の保険料をW負担する「海外勤務者」の苦悩【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

衆院選が近づき、国内では「社会保険料負担」や消費税について議論が交わされています。こうしたなか、長年日本と海外をまたいで働く「海外勤務者」は、日本と就労国の社会保険料を二重に負担せざるを得ないケースもあります。そこで本稿では、社会保険料負担をめぐる国内外の議論を踏まえつつ、「海外勤務者」の社会保険料の税務上の取扱いについて整理します。

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フランスで払った社会保険料は、フランスで所得控除可能

前提として、外国で払った社会保険料は、日本では基本的に控除できません。しかし、前述した「二重負担」と「掛け捨て」の問題を解消するために、日本とフランスのあいだには、租税条約とは別に「社会保障協定」が存在します。

 

正式名称は「社会保障に関する日本国政府とフランス共和国政府との間の協定」で、2005(平成17)年2月に署名されました。

 

また、2007(平成19)年には、「租税条約改正議定書」によって、この社会保障協定に関連する社会保険料条項が盛り込まれました。すなわち、社会保障協定と租税条約の改正が相互にリンクする形となっているのです。

 

この改正により、条約相手国で支払われた社会保険料について、就労国において所得控除を認めるという、これまでに例のなかった措置が規定されました。

 

これは、社会保険料に関する租税条約上の取扱いに、新たな枠組みを設けたものといえます。

 

外国の社会保険料は原則「控除不可」

日本で社会保険料控除の対象となるものについて、国税庁のホームページでは以下のように説明されています。

 

「租税条約の規定により、当該租税条約の相手国の社会保障制度に対して支払われるもの(我が国の社会保障制度に対して支払われる当該租税条約に規定する強制保険料と同様の方法ならびに類似の条件および制限に従って取り扱うこととされているものに限ります)のうち一定額」

 

これは、日仏間の取扱いを前提とした規定であり、フランスの社会保険料を想定したものです。したがって、他国で支払った社会保険料については、原則として日本の社会保険料控除の対象とはなりません。

 

「日本の社会保険料控除のしくみと同様に、外国で支払った分も控除できるはずだ」と考えるのは自然ですが、現行制度上、そのような一般的な取扱いは認められていない点に注意が必要です。

 

なお、日仏租税条約における対象税目(第2条)として、日本については、所得税、法人税および住民税が規定されています。一方、フランスについては、所得税、法人税、法人概算税、給与税、一般社会保障税(CSG)および社会保障債務返済税(CRDS)が対象とされています。これらには、源泉徴収税や前払税も含まれます。

 

この点からも、日仏間では社会保険料と税の境界が他国に比べて明確に制度化されていることがわかります。

 

フランスの例は極めて例外的…海外保険料控除、道はなお狭く

外国で支払った社会保険料が日本の税務上どのように扱われるのかという問題は、個人にとっても企業にとっても見過ごせない論点です。現行制度では、原則として外国の社会保険料は社会保険料控除の対象とはならず、日仏間のような特例は極めて例外的な存在にとどまっています。

 

今後、国際的な人材移動がさらに進むなかで、社会保険料と税務の関係がどのように整理されていくのか。その動向は、引き続き注視していく必要があるでしょう。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

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