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香港、シンガポール、ギリシャ…富裕層を“優遇”する国も
一方、富裕層を優遇する動きをする国もみられます。代表的なのが、「相続税の廃止」です。香港は2006年、シンガポールは2008年、ポルトガルとスロバキアは2004年に相続税を廃止しました。特にスロバキアとシンガポールでは、廃止後に富裕層の移住が増加したといわれています。
しかし、これまで富裕層に対する優遇税制を維持してきたスイスでは、近年はその見直しを求める意見も増えており、その動向が注目されています。
実際、2024年後半に地球温暖化対策の財源確保を目的として、連邦税として超富裕層に相続税を課す案が浮上しました。この案では、最高税率は50%とされていました。ただし、直接民主制を採るスイスでは2025年11月30日に国民投票が行われ、反対票が78.3%に達して否決されました。
こうしたスイスでの課税強化の議論を背景に、富裕層の移住先として存在感を高めているのがギリシャやイタリア、ポルトガルです。これらの国では一定の条件を設けつつも、富裕層の移住を促す優遇税制が導入されています。
「二極化」で揺れる国際合意…富裕層課税はどこへ向かうのか
国際的には、国連が2027年をめどに「国際租税協力枠組条約」の策定作業を進めています。この条約は、多国籍IT企業の市場国における所得配分と、富裕層課税の強化という2つの目的を掲げています。
もっとも、米国や日本など8ヵ国はこの枠組条約に反対の意向を示しており、EUも明確な立場を示していません。
以上のように、富裕層課税をめぐる各国の方向性は二極化しており、課税強化を決定づける国際的な合意は現時点では存在しません。
そのため、今後も、CRSやタックスヘイブンとの税務情報交換協定など、税務情報の国際的共有を軸とした取り組みが継続されるものと考えられます。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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