G20「国際租税協力宣言」の一方で、スイスでは「超富裕層」に対する課税案が否決…〈強化〉か〈優遇〉か、二極化する富裕層課税のゆくえ【国際税務の専門家が解説】

G20「国際租税協力宣言」の一方で、スイスでは「超富裕層」に対する課税案が否決…〈強化〉か〈優遇〉か、二極化する富裕層課税のゆくえ【国際税務の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

近年、G20をはじめ世界各国において、「富裕層への課税のあり方」が重要な政策課題として位置づけられています。租税回避への対策や税負担の公平性の観点から富裕層への課税強化を求める声が高まる一方で、多額の税収をもたらす富裕層を呼び込むため、税制上の優遇措置を設ける国も少なくありません。本稿では、富裕層課税を強化する国と、富裕層を優遇する国の政策をそれぞれ概観したうえで、現代の富裕層課税が抱える二律背反的な状況を整理します。

 ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

トランプ劇場と超富裕層課税 増税か、減税か――税制が映し出すアメリカの真実
奥村眞吾(著)+ゴールドオンライン(編集)

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

 

香港、シンガポール、ギリシャ…富裕層を“優遇”する国も

一方、富裕層を優遇する動きをする国もみられます。代表的なのが、「相続税の廃止」です。香港は2006年、シンガポールは2008年、ポルトガルとスロバキアは2004年に相続税を廃止しました。特にスロバキアとシンガポールでは、廃止後に富裕層の移住が増加したといわれています。

 

しかし、これまで富裕層に対する優遇税制を維持してきたスイスでは、近年はその見直しを求める意見も増えており、その動向が注目されています。

 

実際、2024年後半に地球温暖化対策の財源確保を目的として、連邦税として超富裕層に相続税を課す案が浮上しました。この案では、最高税率は50%とされていました。ただし、直接民主制を採るスイスでは2025年11月30日に国民投票が行われ、反対票が78.3%に達して否決されました。

 

こうしたスイスでの課税強化の議論を背景に、富裕層の移住先として存在感を高めているのがギリシャやイタリア、ポルトガルです。これらの国では一定の条件を設けつつも、富裕層の移住を促す優遇税制が導入されています。

 

「二極化」で揺れる国際合意…富裕層課税はどこへ向かうのか

国際的には、国連が2027年をめどに「国際租税協力枠組条約」の策定作業を進めています。この条約は、多国籍IT企業の市場国における所得配分と、富裕層課税の強化という2つの目的を掲げています。

 

もっとも、米国や日本など8ヵ国はこの枠組条約に反対の意向を示しており、EUも明確な立場を示していません。

 

以上のように、富裕層課税をめぐる各国の方向性は二極化しており、課税強化を決定づける国際的な合意は現時点では存在しません。

 

そのため、今後も、CRSやタックスヘイブンとの税務情報交換協定など、税務情報の国際的共有を軸とした取り組みが継続されるものと考えられます。

 

 

矢内 一好

国際課税研究所

首席研究員

 

 

【注目のセミナー情報】​​​

【短期償却】5月9日(土)オンライン開催

《所得税対策×レバレッジ投資》
インフラ活用で節税利益を2倍にする方法

 

【相続×資産運用】5月13日(水)オンライン開催

《富裕層向け》
後悔しないための「相続対策・資産運用」戦略

 

 

【関連記事】

■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】

 

■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】

 

「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】

 

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧