国連の動向――途上国主導の「対抗軸」
OECDが主に先進国で構成されるのに対し、国連には多くの途上国が加盟しています。この構造の違いが、国際課税に対する姿勢の差となって表れています。
国連の専門家委員会は、従来から「国連モデル租税条約」の検討を進めてきました。大手IT企業への課税強化を目的として、使用料条項の改正などを提言してきましたが、その影響は限定的でした。
こうしたなか、OECD主導の包摂的枠組において、自らの意見が十分に反映されていないと不満を募らせていたアフリカ諸国などが声を上げます。その結果、2023年8月、国連事務総長による報告書「国連における包摂的かつ効果的な国際租税協力の促進」が公表されました。
これを受け、同年11月、ナイジェリアの提案により、「国際租税協力枠組条約」の策定が正式に決定されました。2024年6月には協議事項草案(ToR:Terms of Reference)が公表され、同年8月には賛成多数で採択されました。なお、日本は反対した8ヵ国の一員でした。
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枠組条約は「ゲームチェンジャー」になるのか
枠組条約は、2027年の完成を目指して交渉が進められています。しかし、この条約がOECDのMLCに代わる新たな国際課税ルールとして機能するかは、依然として不透明です。
最大の不確定要素は、米国の姿勢です。米国が参加しない限り、国際課税の実効性は大きく損なわれる可能性があります。結局のところ、枠組条約の成否は、米国の政治判断に左右される側面が強いといえるでしょう。
また、「船頭多くして船山に上る」という諺の通り、国連主導の枠組みでは、先進国と途上国の利害調整が難航し、仮に条約が成立しても、実行性に乏しくなる懸念があります。途上国は、大手IT企業からの大幅な税収増を期待していますが、その思惑通りに事が運ぶ保証はありません。
国際税務は「戦国時代」へ――次の焦点は米大統領選か
今後の展開としては、米国、先進国中心のOECD、そして途上国の多い国連の三極構造による混乱状態が、しばらく続く可能性が高いと考えられます。
この混乱を収束させる「関ケ原」となり得るのが、2027年に予定されている米国大統領選挙です。トランプ政権後の新大統領が、国際課税ルールに対してどのような姿勢を示すかが、今後の国際税務秩序を大きく左右することになります。
さらに、国連の枠組条約では、別途議定書において富裕層課税の強化も検討されています。この分野は、デジタル課税とは異なる文脈で国際的な議論が進む可能性があり、今後、もう1つの大きな焦点となるでしょう。
矢内 一好
国際課税研究所
首席研究員
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