細かな寸法が整然と並び、座った瞬間にふっと心が落ち着く和室の空間。そこには、偶然ではない「美しさの法則」が隠されています。私たちが何気なく眺める床の間の絶妙なバランスは、実は数百年前から受け継がれてきた緻密な計算によって導き出されたものでした。本記事では、木村浩之氏の著書『現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、職人の「墨出し」から始まった日本建築のルーツを紐解くとともに、室町時代から伝わる究極の寸法図「木割り」が現代の施工図にどう繋がっているのかを解説します。

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「木割り」という施工図

日本の室町時代以降に貴族の住まいとして定着した「書院造り」の家の座敷には、床の間と呼ばれるものがありました。それから600年余りを経た現代の住まいにも引き継がれています。床の間は掛け軸や陶器などの美術品を飾るための場所であり、その家の主人の趣味の高さや財力、権勢を示すものとして住まいの重要な要素となっていました。それだけに使用する材料や各部の寸法などは厳密に定められ、「木割り」と呼ばれる寸法図がありました。これも日本の建築独特の施工図、あるいは施工のルールであったということができます。

 

床の間は「木割り」によって寸法の比例関係が決められ、デザインのバランスが取れるようにできています。

 

一例を挙げれば、床の間と床脇を合わせた壁の長さ(間口)が2間(12尺)であれば、床の間を7尺、床脇を5尺とし、床柱の太さが4寸であれば落とし掛けと長押の間は8寸(床柱の太さの2倍)、床框の成(高さ)も4寸、落とし掛けの成は2分の1の2寸などといった具合です。掛け軸をかける軸吊り金具も用意されますが、その高さも、客人の座った位置から見上げて見えない位置、と決められています。

 

床の間まわりはすべての寸法が一定の比率でルール化され、この寸法の比率を守ることで、畳に正座して床の間を見たときに、すべてがバランスよく整えられたものとして目に入ってくるようになっています。

 

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現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

木村 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

どんなに優れた「設計図」も、実現するためには「施工図」が欠かせない! 数多くの有名建築の生産設計を手掛けてきた第一人者が施工図の役割と魅力を実例とともに語り尽くす! 建物の図面と聞いてまず思い浮かべるのは「…

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