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施工図を進化させた納まりと取り合いへのこだわり
施工図を作成することで設計図には表現されていない細部の不整合部分が解消でき、工事の円滑な進行が可能になります。もっとも施工図の役割はそれだけではありません。施工図には、「納まり」と「取り合い」をより美しく仕上げたいという、日本建築独特のこだわりが反映されています。
納まりというのは日本の建築に固有の言葉遣いで、複数の部材が接合するときの関係の美しさや落ち着き具合を示すものとして使われます。「納まりがきれい」とか「この部分はどうやって納めているの?」といった使い方をします。ものを収納するという意味での「収める」「収まらない」とは異なる意味合いです。収まるかどうかは物理的に入るか入らないかですが、ここでいう納まりは、関係の美しさを表現する言葉で、日本人独特の繊細な美意識が反映しています。
実際、納まりが多少雑でも建築としての機能に大きな支障は生じません。1ミリくらいずれていても、わずかに隙間が空いていても、特に問題はないのです。しかし、日本人はこの身近な乱雑さには不寛容で、納まりの悪いものは多くの人が「なんだか気持ちが悪い」と受け止めます。
日本人は、半径1メートルくらいの範囲において非常に敏感です。ところが自分の体から5メートル、10メートルと離れるとかなり鈍感になり、雑然としていても気になりません。その点、欧米とは正反対です。欧米のまちなみは美しく整然としていますが、身の回りには不ぞろいなもの、曲がったところなどはいくらでもあり、細かく気にする人はいません。
近景に美しさを求める日本の感性や文化の下で、納まりへのこだわりはひときわ強いものがありました。それは時代を超えて受け継がれ、その強い志向は日本の施工図と施工現場を大きく進化させてきた原動力となったのです。
また、木と金属、コンクリートなど異なる素材がぶつかり合う場所も建築には数多くありますが、日本の建築では、それがどのように関係しているか、その「取り合い」についても、納まり同様、美しさや落ち着きに大きな関心を払ってきました。
特に最近の建築は、木や石、タイル、スチール、アルミなど、さまざまな材料を使うようになりました。また、コンピュータを使って3次元でデザインする手法も一般化し、2次元の設計では考えられなかったような曲面を駆使したデザインも増えています。建築というのは基本的には水平・垂直の世界ですが、そこに曲線や曲面が加われば、細部の取り合いは一気に複雑化します。施工図の役割は大きくなる一方なのです。
しかも日本は世界でも有数の地震国であり、台風も毎年必ず襲来します。厳しい耐震・耐風性能を確保することが求められ、その性能を設計どおりに発揮するためにも、高い施工精度が求められます。詳細な施工図に基づいた建築でなければなりません。

