細かな寸法が整然と並び、座った瞬間にふっと心が落ち着く和室の空間。そこには、偶然ではない「美しさの法則」が隠されています。私たちが何気なく眺める床の間の絶妙なバランスは、実は数百年前から受け継がれてきた緻密な計算によって導き出されたものでした。本記事では、木村浩之氏の著書『現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、職人の「墨出し」から始まった日本建築のルーツを紐解くとともに、室町時代から伝わる究極の寸法図「木割り」が現代の施工図にどう繋がっているのかを解説します。

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施工図は棟梁の墨出しがルーツ

日本の建築は山に大量にあった木を伐って材料とした木造住宅が基本です。豊かな森林がある国ではどこでも、手に入りやすい木を使って建築が始まりました。建築に使える木が乏しい国々ではレンガや石を積み上げた建築が基本です。

 

木は生き物ですからどうしても曲がったり、太さが異なったりします。そこで比較的木の幹がまっすぐに育つ針葉樹のスギやヒノキなどを柱や梁に使って家の骨格をつくっていきました。それでも微妙な曲がりはあります。今では定格の寸法に製材された木を使いますからこれを水平垂直に組むのは難しくありません。しかし、昔の農家や町家などでは、山から伐り出した太さも曲がり方も、それぞれ個性的な木を縦横に組み、堂々とした架構をつくっています。それは非常に難しい作業でした。建築に当たった棟梁は、墨付け、あるいは墨出しと呼ばれる作業をしました。

 

伐り出した木を乾燥させ、皮をむき、外周の丸い部分を落として角材にしたものに、じかに墨で印を付け、木を組み合わせるための「継ぎ手・仕口」と呼ばれる加工を、どの木のどの位置に、どんな大きさで行うか、その指示を直接描いたのです。墨壺と呼ばれる木製の道具を見たことがある人もいると思います。糸が巻き取られた回転部と、墨を溜めた壷がセットになったハンディな道具です。墨が付いた糸の一端を木材のある点で固定し、そこから木材に沿って糸を繰り出してピンと張り、糸の真ん中を指で摘まんで放せば、糸が反動で木材を打つように戻るので、木材の表面に直線の痕が付きます。その墨の線に沿ってのこぎりを引くのです。

 

また、現場の指揮を執る棟梁は板図と呼ばれるものを描きました。どの柱をどこに立てるか、家の平面形に合わせて一本一本場所を手描きで指示した板の上の「図面」です。横軸に、い、ろ、は……、縦軸に、一、二、三……と点を取り、例えば「ろの二」には「ろ二」と相番を振った柱を立てるという指示です。棟梁は建築を始める前に、作業小屋の中で使用するすべての柱・梁材を前に、板図を描き、柱や梁一本一本に墨付けをして、必要な加工の指示をしました。

 

つまり、完全に同一規格に製材されていない木材や自然のままの石を使って建築した昔の民家では、構造材をはじめ木組みに使われる木は一本一本使う場所が固定され、その場所にふさわしい寸法に加工する必要がありました。そしてその計画はすべて木に直接描かれていたのです。建築職人は棟梁があらかじめ描いた墨のとおりに木を加工し、指示されている場所に使ってきちんと水平垂直が確保された建築をつくり上げていきました。棟梁の墨の痕こそ日本の建築における最初の“施工図”であったといえると思います。

 

 

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現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

木村 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

どんなに優れた「設計図」も、実現するためには「施工図」が欠かせない! 数多くの有名建築の生産設計を手掛けてきた第一人者が施工図の役割と魅力を実例とともに語り尽くす! 建物の図面と聞いてまず思い浮かべるのは「…

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