建物のディテールに宿るわずかなズレや違和感。私たちがそれを「なんだか気持ち悪い」と感じてしまうのは、単なる神経質ではなく、日本建築が古来より大切にしてきた特有の美意識によるものかもしれません。本記事では、木村浩之氏の著書『現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、1ミリの妥協も許さない「納まり」の概念や、海外にはない日本独自の建築システムが生んだ「施工図」の重要性について解説します。

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海外にはない施工図

海外と日本の建築システムの違い
海外と日本の建築システムの違い

 

実は海外の建築界には施工図という分野はありません。工事に必要な図面は、すべて設計を行う設計事務所や設計者が描き、それで建築は成り立ちます。日本ほど細部の納まりや取り合いの美しさに対するこだわりがないこと、耐震性能を確保するための高い施工精度の確保が必要とされないことが背景にあります。

 

また、設計と施工の役割分担の仕方の違いも、海外で施工図分野が育たない一因になっています。

 

海外の建築では設計者(建築設計事務所)の業務範囲が広く、クライアント(施主)から設計のすべてを請け負います。設計が完了するとクライアントは建築会社を決めて建築を任せます。必要な図面はすべて設計段階で描かれているという考え方です。当然、設計事務所が得るフィーも高額です。しかし日本では、海外に比べて行政に提出し、承諾を得なければならない書類が膨大であること、また、行政の審査も厳しいことから、設計者はその作業に多くの時間と労力をかけざるを得ません。

 

こうしたことから、海外では設計事務所が潤沢な予算を使って設計に関するいっさいを担うのですが、日本の設計事務所は実施設計までを請け負い、確認申請業務を行って建築確認済証を得るところで、いったん仕事を終えることになります。設計事務所としては基本案(実施設計)のところまでで、その後の詳細設計と施工図はゼネコンとゼネコンが契約した施工図会社が進めることになっているのです。

 

そのためゼネコンの果たす役割が相対的に大きくなり、設計図を読み込み、その意図を把握したうえで施工図を作成しながら施工全体を請け負います。

 

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現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

現代建築の美と機能性を実現する 生産設計と施工図の世界

木村 浩之

幻冬舎メディアコンサルティング

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