(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後に地方へ移住し、のびのびと暮らす――そんな「理想の老後像」に憧れる人は少なくありません。しかし現実には、移住先での人間関係や生活の変化に適応できず、孤立や体調不良に陥るケースもあります。内閣府『高齢社会白書(令和6年版)』によれば、65歳以上の高齢者のうち67.1%が「現在の生活に不安がある」と回答。その理由として「健康や介護への不安」(36.7%)、「収入・資産が十分でない」(48.1%)などが挙げられており、生活環境の変化は高齢期の大きなストレスにもなり得ます。

「駅前の小さな部屋の方が」…両親の選択

確かに地方移住には、住環境の広さや物価の安さといったメリットがあります。しかし、高齢者にとっては「医療機関へのアクセス」「公共交通機関の不便さ」「近所づきあいの希薄さ」など、多くの見落としがちな壁があるのも事実です。

 

田中さんは両親と話し合い、次のような決断をしました。

 

●地方の一軒家は売却し、駅近でバリアフリーのUR賃貸物件へ転居

 

●父は月1回の認知機能検査、母はカウンセリングを継続

 

●食事宅配や訪問診療など、外部支援サービスを導入

 

「畑も庭も、もういらない。駅前の小さな部屋の方が、気持ちが落ち着く」

 

母がそうつぶやいたとき、田中さんは“老後に必要なのは広さや理想より、安心感なのかもしれない”と気づいたといいます。

 

定年後の暮らし方に“正解”はありません。しかし、支援が届きやすい場所にいること、困ったときに頼れる関係性があること――そうした「現実の選択」が、老後の安心を支える土台になります。

 

夢や理想だけでなく、「本当に暮らし続けられる場所とは何か」を見極めること。それが、これからの高齢社会における“豊かさ”の条件なのかもしれません。

 

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