(※写真はイメージです/PIXTA)

老後の生活は「年金があれば何とかなる」ほど単純ではありません。年金額には個人差が大きく、住居費や医療費が重なると、最低限の生活さえ苦しくなるケースもあります。総務省『家計調査(2024年)』では、高齢単身無職世帯の平均消費支出は月約14.9万円、可処分所得は約12.1万円とされ、毎月約2.8万円の赤字が生じていることが示されています。数字の上では見えにくい“老後の息苦しさ”は、日常の何気ない場面に表れることがあります。

それでも利用している「高齢者向け制度」

そんな佐藤さんも、すべてを一人で抱え込んでいるわけではありません。

 

医療費については、後期高齢者医療制度により自己負担は1割。また、市町村の高齢者向け福祉サービスを利用し、月に数回、見守り訪問を受けています。

 

「誰かが声をかけてくれるだけでも、気持ちは違います」

 

ただし、こうした制度があっても、日々の生活費そのものが増えるわけではありません。佐藤さんが一番不安に感じているのは、将来の医療や介護です。

 

「入院したら、差額ベッド代とかどうなるんだろうって。考え出すと、夜眠れなくなります。今は元気でも、ずっとこのままじゃないですからね」

 

ATMの前で、佐藤さんがため息をつく理由は、単に今所持金が少ないからではありません。

 

「この金額で、来月も、その先も生きていくんだって思うと、気が遠くなるんです」

 

それでも、佐藤さんはこう続けました。

 

「贅沢はできなくても、せめて安心して暮らしたい。それだけなんです」

 

年金の額は個人の努力だけではどうにもならない側面があります。ATMの前で立ち止まるその背中は、数字では見えない老後の現実を静かに映し出していました。

 

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