(※写真はイメージです/PIXTA)

2026年現在、ようやく金利が上昇し始めたが、私たちが忘れてはならないのは、かつて日本や欧州で長期間実施された「マイナス金利政策」の教訓だ。実は、現金には中央銀行の極端な政策に対するブレーキとしての役割がある。預けているだけで貯金が減っていくマイナス金利下において、銀行から資金を引き出し、手元に現金で保管することは、個人の資産を目減りから守るための唯一の出口だった。国民がこの「現金化」という対抗手段を持っている限り、中央銀行は極端なマイナス金利を設定することができない。しかし、今進んでいるキャッシュレス化・脱現金の動きは、この出口を完全に塞ぎ、国民の資産を逃げ場のないデジタル管理下に置くリスクを孕んでいる。将来再び訪れるかもしれない不況や不当な資産の目減りから、自分たちの老後資金をどう守るべきか。ジェイ・L・ザゴースキー氏の著書『ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値』(プレジデント社)より、現金の物理的な防御力を解き明かす。

ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中! 

データで読み解く「日本経済」のリアル【エンタメ・スポーツ・事件編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)

データで読み解く「日本経済」のリアル【季節&気象・マインド・おもしろジンクス編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)

富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)

 

シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!

 

検討しただけで市場激震…香港の「マイナス金利計画」騒動

そのマイナス金利にいち早く手を出そうとした動きが、1987年12月の香港で見られた。その数年前の1983年、香港当局は、香港ドルと米ドルを1米ドル=7.75香港ドルの固定レートに設定した。1987年11月には、多くの投資家がこの固定相場制は崩壊すると確信するようになる。

 

その結果、外国人投資家が香港ドル買いに動き出し、現地銀行に蓄え始めたため、香港ドル切り上げの可能性が高まった。外国からの資金流入を食い止めようと、香港当局は、現地銀行のすべての大口預金を対象にマイナス金利の適用を計画中と発表した。

 

計画では、最低130万米ドルの預金に対してマイナス5.5%、2500万米ドル以上の預金に対して最大でマイナス88%のマイナス金利が適用されるとのことだった。

 

マイナス金利計画を発表しただけで、外国人投資家は香港ドル買いから売りに転じ、香港の銀行から資金を引き揚げることになった。その結果、香港ドル切り上げの必要はなくなり、マイナス金利も実施されることはなかった。

 

それでも、マイナス金利を検討中と言うだけで、当時は大きな衝撃を持って受け止められたのである。

リーマンショックが「マイナス金利」の転換点に

2008年、いわゆるリーマンショックで世界経済は深刻な低迷状態に陥った。この景気後退に対処しようと、多くの国々の中央銀行は、利下げに踏み切った。

 

2008年になるまでは、投機筋による香港ドルへの攻撃などの不穏な動きは別として、現実的にはゼロ金利が最低ラインと考えられていた。これは、金利をこれ以上下げられないという意味で「ゼロ金利制約」と呼ばれた。

 

ところが、景気後退が長引く中、各国の中央銀行は、この制約を破り、金利をゼロ以下に押し下げたのである。

 

特に重要な金利の1つは、EU加盟国の各銀行が欧州中央銀行(ECB)にオーバーナイト(翌日返済)で預ける資金に対して、ECBが支払う金利だった。

 

景気後退に突入した2008年10月時点では、この金利は3%を超えていた。だが、2012年から2013年にかけて、ECBはこれをゼロに抑え込んだのである。さらに、2014年から2022年まではマイナス金利になったのである。

 

マイナス金利とは、貯蓄すると痛い目に遭うということだ。例えばECBは、2019年10月から2022年6月までマイナス0.5%の金利を設定していた。これは、1万ドルを1年預けていると、誰かが勝手に50ドルを持ち去ることを意味する。

 

マイナス金利はほかの国でも設定された。日本銀行は、2024年冬までの8年間にわたって、「日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する」といった方針をたびたび発表し、マイナス金利を維持した

※ Bank of Japan (2024)

 

次ページ銀行が「現金嫌い」な理由

※本連載は、ジェイ・L・ザゴースキー氏著、斎藤栄一郎訳による書籍『ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値

ザ・パワー・オブ・キャッシュ デジタル経済にこそ跳ね上がる現金の価値

ジェイ・L・ザゴースキー,斎藤 栄一郎

プレジデント社

現金(キャッシュ)を使わない機会が増えている。 この流れは20年以上続いており、「キャッシュのほうが得」という風潮にもなりつつある。でも、本当にそうなのだろうか? キャッシュレス社会で本当に得をするのは、「カ…

カインドネスシリーズを展開するハウスリンクホームの「資料請求」詳細はこちらです
川柳コンテストの詳細はコチラです アパート経営オンラインはこちらです。 富裕層のためのセミナー情報、詳細はこちらです 富裕層のための会員組織「カメハメハ倶楽部」の詳細はこちらです オリックス銀行が展開する不動産投資情報サイト「manabu不動産投資」はこちらです 石福金属工業のお知らせ 不動産小口化商品の情報サイト「不動産小口化商品ナビ」はこちらです 特設サイト「社長・院長のためのDXナビ」はこちらです 一人でも多くの読者に学びの場を提供する情報サイト「話題の本.com」はこちらです THE GOLD ONLINEへの広告掲載について、詳細はこちらです

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧