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検討しただけで市場激震…香港の「マイナス金利計画」騒動
そのマイナス金利にいち早く手を出そうとした動きが、1987年12月の香港で見られた。その数年前の1983年、香港当局は、香港ドルと米ドルを1米ドル=7.75香港ドルの固定レートに設定した。1987年11月には、多くの投資家がこの固定相場制は崩壊すると確信するようになる。
その結果、外国人投資家が香港ドル買いに動き出し、現地銀行に蓄え始めたため、香港ドル切り上げの可能性が高まった。外国からの資金流入を食い止めようと、香港当局は、現地銀行のすべての大口預金を対象にマイナス金利の適用を計画中と発表した。
計画では、最低130万米ドルの預金に対してマイナス5.5%、2500万米ドル以上の預金に対して最大でマイナス88%のマイナス金利が適用されるとのことだった。
マイナス金利計画を発表しただけで、外国人投資家は香港ドル買いから売りに転じ、香港の銀行から資金を引き揚げることになった。その結果、香港ドル切り上げの必要はなくなり、マイナス金利も実施されることはなかった。
それでも、マイナス金利を検討中と言うだけで、当時は大きな衝撃を持って受け止められたのである。
リーマンショックが「マイナス金利」の転換点に
2008年、いわゆるリーマンショックで世界経済は深刻な低迷状態に陥った。この景気後退に対処しようと、多くの国々の中央銀行は、利下げに踏み切った。
2008年になるまでは、投機筋による香港ドルへの攻撃などの不穏な動きは別として、現実的にはゼロ金利が最低ラインと考えられていた。これは、金利をこれ以上下げられないという意味で「ゼロ金利制約」と呼ばれた。
ところが、景気後退が長引く中、各国の中央銀行は、この制約を破り、金利をゼロ以下に押し下げたのである。
特に重要な金利の1つは、EU加盟国の各銀行が欧州中央銀行(ECB)にオーバーナイト(翌日返済)で預ける資金に対して、ECBが支払う金利だった。
景気後退に突入した2008年10月時点では、この金利は3%を超えていた。だが、2012年から2013年にかけて、ECBはこれをゼロに抑え込んだのである。さらに、2014年から2022年まではマイナス金利になったのである。
マイナス金利とは、貯蓄すると痛い目に遭うということだ。例えばECBは、2019年10月から2022年6月までマイナス0.5%の金利を設定していた。これは、1万ドルを1年預けていると、誰かが勝手に50ドルを持ち去ることを意味する。
マイナス金利はほかの国でも設定された。日本銀行は、2024年冬までの8年間にわたって、「日本銀行当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%のマイナス金利を適用する」といった方針をたびたび発表し、マイナス金利を維持した※。
※ Bank of Japan (2024)
