母と兄の世話を切り離せないのが納得いかない
結局、通いのサポートを背負い込むことになったまどかさん。
「母親の介護は、子どもの義務だと思います。でも、あまりにもきょうだいの分担が不公平。〈そばに兄がいるのに、なんで?〉っていう…。母のお世話に、もれなく兄のお世話がセットになっているというか」
まどかさんは、母と兄の世話を切り離せないのが納得いかないと、いら立ちを募らせます。
さらに精神的なストレスも大きいといいます。高血圧の持病がある母親のため、体調を考えた薄味の食事を準備していると、兄が横からつまみ食いして「うわっ、なにこれ、マズい!」などと口をはさむのです。
「以前、幼馴染の友人に母の体調のことを愚痴ったら、母の好物の高級フルーツをくれたんです。喜んで実家に持って行ったら、兄が全部食べてしまって…」
「こういうストレスが積み重なることで、ボディブローのように効いてくる。思わず叫び出しそうになることがあります」
40~50代が直面している、価値観の変化
ライフエレメンツ株式会社が実施した「ビジネスケアラーの遠距離介護に関する実態調査」によると、まどかさんのように別居で介護を行っている人の約4割は、介護先まで片道1時間以上を要していることが明らかになりました。移動そのものが大きな負担となっている実態がうかがえます。
また、遠距離介護を行っている人が介護先を訪問する頻度は、全体の6割以上が「月に1回以上」介護先を訪問していることが判明。まどかさんは毎週末通っていますが「週に1~3回」と回答した人は14.6%と、距離が離れていても頻繁に足を運ばざるを得ないケースが少なくないことが見て取れます。
介護に対する不安については、「不安がある」「やや不安がある」と回答した人が77%を超えており、最も多かったのは「お金・発生する費用」で66.7%。そして、まどかさんが感じているように、「家族・親戚間で介護負担が偏っている」という回答も29.1%にのぼりました。
まどかさんは男性と肩を並べて働く中間管理職ですが、その一方で「家事・介護は女性がやるべき」という〈昭和の価値観〉が捨てきれず、自分を追い込んでしまっているのかもしれません。そして介護される母親もまた「家事・介護は女性がやること」という昭和の価値観が〈常識〉としてしみついているのかもしれません。
いまの50~40代は「働き方」「男女の役割」「介護の分担」をはじめとする、従来の価値観や考え方が大きく変化しようとする流れのなかで、仕事や介護の問題が「自分事」として降りかかってきている世代です。
まどかさんが「叫びそう」というほどストレスをためている母親の介護問題は、古い価値観や常識を論拠とした家族内の圧力によるものだといえるのではないでしょうか。仕事と介護を両立するには、早い段階で情報収集を行い、外部サービスや相談窓口を活用することが重要です。
まどかさんが抱える問題は、これからの働き方や家族のあり方を考えるうえで見過ごすことのできない、切実な問題だといえそうです。
[参考資料]
ライフエレメンツ株式会社「ビジネスケアラーの遠距離介護に関する実態調査」
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