中間管理職の40代女性、週末のたびに郊外の実家に帰る理由
都内の企業で中間管理職として働く47歳の独身女性、佐藤まどかさん(仮名)は、1年前から仕事と介護を両立する「ビジネスケアラー」として日々を送っています。平日は都内でフルタイム勤務をこなし、週末になると、都内の賃貸マンションから横浜市青葉区の実家へ片道1時間ほどかけて通い、高齢の母親のサポートをしているのです。
田園都市線の急行が止まらない駅から、バスに乗って10分程度の場所に佐藤さんの実家があります。かつては人気の高かったこのエリアも、最近はずいぶん空き家が目立つようになりました。築古の実家には、70代後半になった母親と、先日50歳になったばかりの独身の兄が同居しています。
「母は子どものころから兄の生活の世話をくまなく焼いていました。兄も掃除や洗濯、食事といった身の回りの世話を母に頼り切りなのです」
まどかさんは「40代の独身男性が、勤務先に母親の弁当を持っていくってどうなの…?」と意見したこともありましたが、母親から「お兄ちゃんのことはいいの!」とバッサリ切り捨てられてしまいました。
「兄の布団はいつもフカフカに整っていて、帰宅すれば母親がすぐさま夕食を温めてくれる。結婚しなくてもいいですよね、そんな環境にいたら…」
まどかさんは転職後、勤務先が実家から遠くなったのをきっかけに家を出ました。30歳のときです。
「私はもともと結婚願望はなかったのですが、このまま家にいたら、絶対兄の面倒を見る役が回ってくるなって。だから、家賃を払ってでも、家を出たほうがいいと思ったんです」
「母のケアに、もれなく高齢独身兄のお世話もついてくる…」
しかし、事態はまどかさんの想定より早く進展しました。きっと80歳過ぎまでは健康に過ごせるだろうと思っていた母親が、庭先で転倒し、足腰を痛めてしまったのです。
「母は病気ひとつしたことがなく、母方の親族はみんな元気で長寿なので、母も当分は健康の心配はないだろうと高をくくっていたのです。でも、予想が外れました」
まどかさんは土日に実家を訪れ、母親の手が回らなくなった家事をサポートしています。お風呂やトイレは以前とは異なり、まったく掃除の形跡がありません。
「兄に文句を言ったことがあるんですよ。〈自分が汚した場所ぐらい、少しはキレイにしようと思わないの? 恥ずかしくないの?〉って…」
まどかさんの兄はニヤニヤ笑うばかりで、母親も「お兄ちゃんは何もできないから…」と援護射撃します。
「本当にばかばかしくて、手伝いに行くのを辞めようと思ったこともあります。でも、仕事中に母から〈お掃除してたら、背中が痛くてたまらないの…〉などと半泣きで何度も電話がかかってきて、無視できます?」
