衆院選で税制はどう変わるのか
昨年末に発表された2026年度税制改正大綱では、再分配や格差是正を意識した改正の方向性が示された。資産課税の強化に言及する発言もあったが、実務で注目されるのは税率そのものよりも、制度設計の方向性や評価基準の変化である。
注目されるテーマは以下の通りだ。
●金融所得課税の分離課税の枠組みが今後も維持されるか
●相続や贈与を含め、資産全体をどのように捉える制度設計に向かうか
●一度限りの見直しか、それとも段階的な強化の入口なのか
税率が数%動くことより、前提となるルールそのものが変わる方が、長期的影響は大きい。特に2026年度税制改正大綱では、金融所得課税の累進性の強化や暗号資産の分離課税化、相続税評価の見直しなどが方向性として示されており、富裕層はこうした「方向性」を重視している。
過去の衆院選でも「すぐには変わらない」が前提だった
過去の衆院選を振り返ると、選挙直後に資産課税が急激に変更された例はほとんどない。金融所得課税、相続税、贈与税など、富裕層の資産に直結する制度改正は、いずれも一定の時間をかけたプロセスを経て実施されてきた。
典型的な流れは次の通りである。
◆選挙や政策論争で論点化
選挙戦や政党の政策発表で、資産課税の強化や見直しが議論に上る。富裕層への負担増、相続税基礎控除縮小、配当課税の強化などは、各衆院選で繰り返し論点として取り上げられた。
◆有識者会議や税制調査会での検討
論点化された課題はすぐに法律化されるわけではない。政府税制調査会や与党内専門部会で詳細に議論され、課題整理、影響分析、代替案検討が行われる。
◆数年をかけた制度化
検討を経て税制改正大綱に盛り込まれ、法律や政令として実施される。論点化から実施まで数年かかることは珍しくない。
具体例として2015年の相続税基礎控除縮小が挙げられる。
相続税負担の強化は衆院選の結果で突然決まったものではない。2009年以降、政策論争を経て税制調査会で詳細に検討され、2013年度与党税制改正大綱に盛り込まれ、実施は2015年に至った。論点化から制度化まで、約6年の期間を要している。
金融所得課税や贈与税も同様で、過去の衆院選のたびに議論はあったものの、制度の根幹が一気に変わった例はない。改正は配当控除の見直しや控除・特例の微調整にとどまり、分離課税の枠組みや基本構造は維持されてきた。
勝敗による制度実現スピードの違い
富裕層に影響する制度改正は、選挙の勝敗によって実現までのスピードや内容が変わる可能性がある。
◆与党が過半数を維持した場合
2026年度税制改正大綱で示された方向性が比較的スムーズに実行される可能性が高い。金融所得課税や相続税評価の見直しも予定通り進む見込みだ。
◆野党勢力が議席を伸ばした場合
税負担や控除の見直しに関する議論が再検討され、実施は数年単位で遅れるか、内容が一部修正される可能性がある。金融所得課税の累進化や暗号資産課税の取り扱いも、改正内容が緩和される可能性がある。
こうした勝敗別のシナリオを踏まえ、複数ケースでの準備が重要となりそうだ。
2月の衆院選を前に進められる「静かな準備」
水面下では着実に準備が進められていくことも検討したい。特に2026年度税制改正大綱の方向性を踏まえた対応が意識されている点も加味されている。
◆資産の棚卸しと可視化
金融資産、不動産、事業用資産の帰属と評価額を洗い出し、含み益を抱えた株式、不動産、暗号資産の税負担を試算しておきたいところだ。資産を売却した場合と保有した場合の影響を数値で把握することが、戦略立案の基本となりそうだ。
◆相続・事業承継スキームの再点検
遺言や株式持分、持株会社の構成が、制度変更に耐えられるか確認したいところだ。特例措置に依存する設計は、税制改正に伴うリスクを含めて代替案を用意しておく必要があるだろう。2026年度税制改正大綱で示された相続税評価や控除の見直しの方向性も、計画再点検の理由となっている。
◆複数シナリオの試算
金融所得課税、相続税評価、控除や特例の縮小など複数条件を前提に、税負担やキャッシュフローを数値化しておくのもいいだろう。重要なのは「どの制度が来るか」を当てることではなく、どのケースでも慌てない状態を作ることだ。
制度変更時に即座に動ける選択肢の確保
生前贈与の実行時期、株式や不動産の売却・組み替え、法人化・持株会社の最適化、事業再編シナリオなどを整理しておくことで、選挙後に迅速な判断が可能となる。
来るべき衆院選を「一過性のイベント」ではなく「流れ」として捉え、どの政策が残り、どの論点が次の制度改正につながるのかを冷静に見極めることが、資産戦略を考える上での鍵となりそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\2月7日(土)-8日(日)限定配信/
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