「借りなければ終わっていた」――現場が選んだ現実的判断
「あの時は、生き延びたと思ったんです」
2020年春、横浜市で居酒屋を営んでいた52歳の男性経営者は、当時をそう振り返る。
新型コロナウイルスの感染拡大により、外出自粛や休業要請が相次ぎ、来店客は激減。売上は前年同月比で8割以上落ち込んだ。一方で、店舗の家賃と正社員3人分の人件費は、毎月確実に発生していた。
ゼロゼロ融資は、事業拡大のための資金ではなく、「倒れないための時間」を確保するための制度だった。その時間が、すべての企業に同じ結果をもたらしたわけではない。返済が始まったいま、その違いが次第に浮き彫りになっている。
倒産件数は減少も、なお続く月30件台
東京商工リサーチの調査によると、2025年にゼロゼロ融資を利用後に倒産した企業は433件で、前年から24.3%減少した。
倒産件数は2年連続で減少しているものの、月別では増減を繰り返しながらも30件台を維持しており、楽観できる状況ではない。
2024年4月には返済開始がピークを迎え、倒産の急増が懸念されていた。実際には、金融機関が返済条件の変更に柔軟に対応したことで、表面化は一定程度抑えられてきたとみられる。
ただしそれは、問題が解決したというよりも、時間をかけて顕在化していると見るのが実情だろう。
「売上は戻ったが、利益は戻らなかった」
冒頭で紹介した横浜市で居酒屋を営んでいたこの男性経営者は、「借りなければ、その時点で終わっていました」と当時を振り返る。
ゼロゼロ融資で確保した約1,200万円は、ほぼすべてが家賃や人件費といった固定費の支払いに消えた。それでも当時は、「いずれ客足は戻る」という前提で、店と雇用を守る選択をした。
実際、2022年以降、来店客は徐々に戻った。しかし、仕入価格は上昇し、人手不足を背景にアルバイトの時給も引き上げざるを得なかった。売上は回復しても、利益は思うように残らなかったという。
返済が始まると資金繰りは急速に悪化。金融機関と協議し返済猶予を受けたものの、価格転嫁や業態転換には踏み切れないまま、2025年に廃業を決断した。
「続けようと思えば続けられたかもしれない。でも、返済の見通しが立たないまま借金だけを残すのは違うと思いました」
「仕事はある。でも、利益が残らない」
建設業でも、ゼロゼロ融資後に経営が行き詰まるケースは少なくない。
中部地方の地方都市で設備工事業を営んでいた40代後半の男性経営者は、従業員6人を抱える小規模事業者だった。
コロナ禍で民間工事が止まり、資金繰りは急激に悪化。ゼロゼロ融資は「工事が再開するまでのつなぎ」として利用した。
数年後、受注は回復したが、職人不足による外注費の上昇や資材価格の高止まりが利益を圧迫した。
「仕事を取れば取るほど、利益が薄くなる。でも断れば、次は声がかからない」
返済猶予で一定の時間は確保できたものの、事業規模の縮小や人員整理には踏み切れず、最終的に返済の見通しが立たなくなり、2025年に廃業を選択した。
倒産は小・零細企業に集中している
東京商工リサーチの調べでは、企業規模別で資本金1,000万円未満(個人企業含む)が269件と全体の62.1%を占めた。
負債額別でも1億円未満が254件(58.6%)と約6割に達しており、倒産は小・零細企業に集中している。
自己資本が薄い企業ほど、物価高や人件費上昇、金利引き上げといった環境変化の影響を受けやすいようだ。
返済猶予によって一定の時間は確保できたものの、事業の立て直しに十分踏み込めなかった企業が、徐々に表面化し始めているのかもしれない。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\2月7日(土)-8日(日)限定配信/
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