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「夫は働き、妻は支えた」60代後半女性が直面する年金の現実
和子さんと同じ60代後半の女性には、同じような境遇の人が少なくありません。結婚を機に仕事を辞め、家庭を守ることが当たり前だった時代を生きてきた世代です。
家計の柱はあくまで夫。妻は家庭を回し、必要に応じてパートで補う──それが「普通」であり、「正しい」とされていた時代でした。その結果、夫婦の年金額は夫の厚生年金が中心になり、妻自身の年金は基礎年金がほとんど、というケースが多く見られます。
制度上、それは設計どおりといえるでしょう。しかし問題は、生活者の実感とのズレです。夫婦で必死にやりくりしてきた。家族のために我慢してきた。老後はもう少し余裕があると思っていた──。こうした思いと、実際の年金額とのギャップが、老後に入ってから静かに効いてくるのです。
さらに女性の場合、「自分が長生きしたらどうなるか」という不安も重なります。夫が亡くなったあとの年金水準、医療・介護費の増加──。通帳を前に溜息が出るのは、数字以上に、先が見えない不安があるからかもしれません。
「いまさら遅い」と思う前に…67歳からでもできる現実的な見直し
和子さんのようなケースで大切なのは、「もう手遅れだ」と諦めてしまわないことです。魔法のように状況が一変する方法はありませんが、一度きちんと確認してみる価値のあることは、いくつもあります。
たとえば、夫婦それぞれの年金が、どこから・いくら支給されているのか、正確に把握しているでしょうか。特に多いのが、「だいたいこのくらいもらっているはず」という曖昧な感覚のまま、生活を続けてしまっているケースです。数字を正面から見るのは勇気が要りますが、見ないまま時間が過ぎるほうが、実はリスクが大きいのです。
和子さんは最近、夫と一緒に家計の整理を始めました。年金や貯蓄を見直すなかで、「家の中も一度整理しておこう」と思い立ったのです。もしものとき、子どもたちが困らないように──そんな気持ちからでした。
押し入れやタンスを整理していると、小さな桐の箱が出てきました。中に入っていたのは、20年以上前に亡くなった母が遺してくれた記念金貨。母が元気だったころ、「いつか役に立つときが来るから」といって、和子さんに託してくれたものでした。当時の評価額は50万円ほどだったと記憶しています。
「そういえば、お母さんがくれたものね……」
タンスの引き出しの奥にしまい込んだまま、すっかり忘れていました。試しに価値を調べてみると、現在では400万円を超える評価額になっていることがわかりました。思わぬ発見に、一瞬、気持ちが明るくなります。
「これがあれば、孫のお祝いくらいは……」
しかし、和子さんはすぐに考え直しました。これは、母が残してくれた最後の贈り物です。「いつか役に立つときが来る」という言葉を思い出すと、いますぐ使ってしまうのは違う気がする──。
それに、この金貨を換金してしまえば、本当になにもかも使い切ってしまう気がする。もしものときのために、取っておいたほうがいいのではないか。
「持っていても、知らなければ意味がない。でも、知ったからといって、すぐに使ってしまうのも違う気がするのよね」

