ゴールドオンライン新書最新刊、Amazonにて好評発売中!
データで読み解く「日本経済」のリアル【エンタメ・スポーツ・事件編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)
データで読み解く「日本経済」のリアル【季節&気象・マインド・おもしろジンクス編】
宅森昭吉(著)+ゴールドオンライン(編集)
富裕層の資産承継と相続税 富裕層の相続戦略シリーズ【国内編】
八ツ尾順一(著)+ゴールドオンライン(編集)
シリーズ既刊本も好評発売中 → 紹介ページはコチラ!
母の「認知症」発覚で、遺産分割協議が頓挫
「母さんは認知症じゃないか、こんな遺産分割協議は無効だ!」
実は母は数年前から入院し、Bさんが面倒を見てきた。ところが、新型コロナウイルス禍で面会に行けない間に、認知症を発症していたことが分かった。
認知症により自分の意思を伝えたり、状況を理解して物事を判断したりできない場合は、意思能力の喪失とみなされ、相続手続きなどの法律行為ができない。成年後見人を定め、遺産分割を代行してもらう必要がある。兄は自分が選んだ弁護士を母の成年後見人とし、裁判所も認めた。
成年後見人はあくまでも認知症となった母の財産を守る立場なので、母の遺留分を侵害する内容の遺言には応じることができない。つまり、父の相続において、一蓮托生だったはずの母とBさんはライバル関係になってしまったのである。
この場合は母が父から受ける相続をBさんが侵害しているとみなされ、母は遺留分(遺産の4分の1)の取り戻しを請求できる。このまま父の遺産が母に行けば、次の母の相続時には兄も相続人になる。
「父さんと母さんの気持ちはどうなるの? ずっと面倒を見てきたのは私よ!」と悲嘆に暮れるBさん。
母の「1通の手紙」は遺言書にならず、遺留分を支払うことに
そんなある日、母の部屋を掃除していたら1通の手紙が出てきた。どうやら入院前に書いた手紙のようだ。きれいな便箋に「娘はずっと私の身の回りの世話をしてくれて感謝している。私の財産はすべて娘に譲る」といった内容が手書きでしたためられていた。
「これが母さんの遺言! ちゃんと意思は示されていた」。母の気持ちに涙したBさんは兄と戦うべく弁護士に相談。母の成年後見人の弁護士と調整することになった。
しかし、母の限りなく遺言に近い手紙も、あくまで私信。公的な遺言書としては認められなかった。それでも、母の気持ちを何とか反映させたいという点で双方の弁護士は合意し、遺留分を本来の額よりかなり低くすることで合意した。
「すべてBさんに」という父の遺言書の内容からは遠いものとなったが、Bさんはその時点でできるだけのことはやったと満足したのも束の間。これが家庭裁判所で認められず、母の権利調停が成立。
その結果、Bさんは遺留分の5000万円を支払うことになってしまった。いずれ来る母の相続で兄と争う日を想像し、陰鬱な気分になっている。
