(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが思春期を迎える頃、親は「どれだけ分かってあげられているのだろう」と自問するようになります。とくに、難関校への進学や塾通いなど“教育投資”を重ねてきた家庭ほど、「ここまで一緒に走ってきたのだから、子どものことは分かっているはず」と思いやすいのかもしれません。ですが、子どもには子どもの世界があります。親が知らないところで、静かに抱え込んでしまう悩みがあることも少なくありません。

高校の年間学習費「公立は約60万円、私立は約103万円」

文部科学省『令和5年度 子供の学習費調査』によると、高校(全日制)に通う1人当たりの年間学習費総額は、公立で約60万円、私立で約103万円。塾や家庭教師を加えるとさらに負担は増します。

 

「教育費の話は、娘に不安を与えたくなくて避けていました。でも、避けた結果、娘が“自分の判断”で抱え込んでしまった。完全に逆でした」

 

数日後、誠さんは娘と2人で話す時間をつくりました。家計が苦しいわけではないこと、ただし“無限に出せるわけではない”こと、だからこそ優先順位を一緒に決めたいこと。そんな話を、できるだけ淡々と共有しました。

 

美優さんはしばらく聞いたあと、小さな声で言いました。

 

「……じゃあ、もう少しだけ、頼っていい?」

 

誠さんは迷わず答えました。

 

「もちろん。頼るのは悪いことじゃない。むしろ、頼ってほしい」

 

その後、美優さんは学校側に事情を説明し、アルバイトはやめました。誠さんは「やめさせた」というより、「相談できる形に戻したかった」と言います。

 

“優等生”であっても、心の中には、親が思いもよらない葛藤があるものです。子どもを管理するのではなく、対話すること。経済面も含めて、家族として向き合うことが、いま改めて問われているのかもしれません。

 

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