(※写真はイメージです/PIXTA)

子どもが思春期を迎える頃、親は「どれだけ分かってあげられているのだろう」と自問するようになります。とくに、難関校への進学や塾通いなど“教育投資”を重ねてきた家庭ほど、「ここまで一緒に走ってきたのだから、子どものことは分かっているはず」と思いやすいのかもしれません。ですが、子どもには子どもの世界があります。親が知らないところで、静かに抱え込んでしまう悩みがあることも少なくありません。

「進学校なら安心」…そう信じていた

「まさか、うちの子が…という気持ちでした。正直、裏切られたような、いや、自分が見えていなかっただけなんですけど」

 

そう語るのは、都内在住の会社員・藤井誠さん(仮名・45歳)。大手メーカーに勤めるサラリーマンで、年収は680万円ほど。妻と高校1年生の娘・美優さん(仮名)と3人で暮らしています。

 

美優さんが通うのは、地域でも指折りの進学校。校内の雰囲気は落ち着いており、誠さんも「勉強に集中できる環境なら安心だ」と感じていました。実際、娘の学習環境には惜しまず投資してきたといいます。塾代は月6万円ほど。模試や参考書、スマートフォンの費用も、必要だと言われれば支払ってきました。

 

ある日、誠さんはふと気づきました。

 

「部活がないはずの日に、帰宅がやけに遅いことが何度かあったんです。塾の予定を聞いても、『今日は自習室で勉強してた』って。それ以上は深く問いませんでした」

 

しかし年明け、誠さんの知人が「この前スーパーで、美優ちゃんがレジに立っているのを見たよ」と言ってきたのです。

 

「最初、信じられませんでした。バイトなんて…禁止されているはずなのに」

 

帰宅後、誠さんは娘に問い詰めました。

 

「ごめん…でも、自分のお金で使いたいものがあったの。家に迷惑かけたくなかった」

 

美優さんは、学校では珍しい“隠れアルバイト組”として、近所のスーパーで週に2回働いていたと明かしました。きっかけは、同級生の家庭との経済格差。周囲には裕福な家庭の子も多く、文房具やスマートフォン、身につけているもの一つひとつに「自分とは違う」と感じる場面があったといいます。

 

「なんで言ってくれなかったの?」と誠さんは問いましたが、美優さんの目は静かに伏せられたままでした。

 

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