(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後の働き方は多様化しています。経済的余裕を背景に趣味に生きる人もいれば、年金だけでは生活が苦しく再就職する人もいます。中には、かつて高収入の職に就いていたにもかかわらず、今はスーパーのレジに立ち続けている高齢者もいます。第三の人生に“格差”が生まれる中、「勝ち組」と呼ばれたはずの人が、なぜ再び労働に身を投じるのでしょうか。

家族に「今の仕事のことは話していません」

内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によると、無職高齢者世帯における平均可処分所得は約22.2万円に対し、平均支出は約25.6万円。毎月約3.4万円の赤字となっており、年金だけでは生活が成り立たない実態が浮き彫りになっています。

 

「妻は治療を続けていますが、あえて今の仕事のことは話していません。『散歩してくる』と言ってスーパーに出勤しています」

 

中原さんにとって、かつての肩書も収入も、今や遠い過去のもの。レジで聞こえる「おじさん遅いよ」という言葉に、プライドが疼く日もあるといいます。

 

「でも、いつか子どもや妻に、今の自分の姿をちゃんと見せられる日が来るといいなと思っているんです。誰かの役に立っているなら、それでいいじゃないかって」

 

中原さんは今日も、無言でバーコードをかざします。淡々と、しかし確かに、再び“働く意味”を探しながら。

 

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