(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢期に差しかかる親世代と、子育てや住宅ローンに苦しむ現役世代。両者の利害が一致した“親子の同居”は、家計的にも精神的にも「支え合いのかたち」として注目される一方で、価値観の衝突や生活スタイルの違いから、想定外のストレスを抱えるケースも少なくありません。“助け合い”のつもりで始めた親子同居は、なぜ崩壊寸前にまで至ったのでしょうか。

「お願い、出ていってください」…本音を伝えた夜

それから数週間後、ついに啓一さんが翔太さんに向かって、静かに口を開きました。

 

「――お前たちには、出て行ってほしい。俺たちの生活を、取り戻したいんだ」

 

その言葉を聞いた瞬間、麻衣さんは黙って涙を流し、翔太さんはわずかにうなずいて「……わかった」とだけ答え、自室へと戻っていったといいます。

 

「申し訳ない気持ちはありました。でも、このままでは、私たちが壊れてしまうと思ったんです」

 

啓一さんはそう振り返ります。

 

“家族だから安心”“一緒に暮らせば助け合える”――そうした理想とは裏腹に、現実には同居がストレスや疲弊を生むこともあるのです。

 

その後、翔太さん一家は近隣にアパートを借りて転居。同居を解消して約1ヵ月が経った頃、美佐子さんが口にした言葉が印象的でした。

 

「もちろん、さみしさはあります。でも……それ以上にホッとしています。“私たちの生活”が、ようやく戻ってきたような気がして」

 

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