「これって…全部、現金?」
「見つけたときは、手が震えました。まさか実家の床下から現金が出てくるなんて…」
そう語るのは、都内の通信会社で働く会社員・石田雄介さん(仮名・46歳)。数年前、母の死後に空き家となった郊外の実家を片付けていたときのことです。
「仏間の畳をはがしたら、小さな収納スペースのような場所があって、そこに耐火金庫が隠してありました。開けてみたら、紙袋に入った1万円札の束がギッシリ」
中には、なんと6,000万円の現金が。そこに祖母や母が現金で資産を保有していた痕跡はなく、「きっと父が残したものだろう」と、石田さんは考えました。
父は15年前に他界しており、その際に相続税の申告も済ませています。今回の現金について、石田さんは「偶然見つかったものであり、課税対象ではない」と思い込み、特に申告などは行いませんでした。
「家族とも話し合い、“父が生前にどこかに隠していたのかもね”という話でまとまりました。母の遺産としても計上しませんでした」
一部は家の修繕費や、車の買い替え、残りは普通預金に入れて生活費に充てていたといいます。
「ポストに“税務署”と書かれた封筒が届いたときは、 “ああ、来たか”と思いました。何も悪いことをしているつもりはなかったので、すぐに対応するつもりでした」
しかし、税務署から告げられたのは、“相続財産の申告漏れ”による更正処分と追徴課税。
金庫から発見された6,000万円は、母の死後に発見されたことから、「母が生前に管理していた財産」と見なされ、相続財産として課税対象とされてしまったのです。
父の死亡からすでに15年が経過しており、仮に父の相続時の申告漏れであったとしても、課税権の除斥期間は過ぎています。そのため税務署は、「母が生前に管理していた財産」として、母の相続財産に組み入れる判断をおこないました。
