前回は、退職金原資としても活用可能な「逓増定期保険」について説明しました。今回は、法人だからこそ加入できる公的制度、「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」の活用法を見ていきます。

法人の代表者・法人形態が加入できる公的制度

法人の代表者だから加入できる、法人形態だから加入できるといった便利な公的制度もあります。「小規模企業共済」と「経営セーフティ共済」といった制度を使う方法です。

 

小規模企業共済とは、「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が運営している個人事業主や中小企業経営者のための退職金制度で、従業員20人以下の個人事業主、または法人の役員といった個人が加入対象とされている公的な制度です。

 

家族を役員にしている人も加入しておくことで、所得税の計算上、掛け金を所得から控除することができます。毎月の掛け金は、最高7万円まで、年間で84万円の所得控除が可能ですが、20年以上加入しないと満額返戻はされない仕組みになっています。ちなみに、小規模企業共済は、給与所得者が副業的にアパートやマンションを経営しているような場合は加入資格にはなりません。

「経営セーフティ共済」なら積み立て限度額は800万円

また、法人で手軽に加入できて効果的なのが「経営セーフティ共済」です。連鎖倒産から中小企業を守ることを目的としてつくられた制度で、小規模企業共済同様に「独立行政法人中小企業基盤整備機構」が行っている共済制度です。40カ月間の加入で満額返戻されるので、法人税の節税対策や、将来の退職金の積み立てなどにも効果的です。

 

この制度は法人そのものが加入するもので、月額の掛け金は5000円から20万円。掛け金の積み立て限度額は800万円までになっています。

 

掛け金は全額法人の必要経費として損金計上できます。この経営セーフティ共済制度は、平成23年9月までは月額8万円だった掛け金の上限が20万円に引き上げられ、320万円だった掛け金の積み立て限度額の上限も800万円まで拡充。金額的にも、賢く使えば賢く活用できるものになっています。

 

ちなみに、個人事業者向けにも経営セーフティ共済はあるのですが、事業所得には認められていても、不動産所得は対象外となります。アパート経営などをしている個人事業主は使うことができません。ここにも法人設立のメリットがあります。

 

同共済は、退職金の積み立て目的以外にも、物件の大規模修繕費用の積み立ての一部などに使うことも可能です。共済制度の詳細については中小企業庁などのホームページでも確認できますので、気になる方はそちらをご参照ください(独立行政法人中小企業基盤整備機構共済制度 http://www.smrj.go.jp/kyosai/)。

本連載は、2013年7月29日刊行の書籍『ビルオーナーの相続対策』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

ビルオーナーの相続対策

ビルオーナーの相続対策

川合 宏一

幻冬舎メディアコンサルティング

ビルを所有しているような資産家であれば、顧問税理士をつけて節税も抜かりなくやっていて不思議はなさそうなものですが、実はほとんど有効な手だてを講じていない人が多いのが現実です。 そのため、そのような人は相続税で数…

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