シニア世代のリフォーム、「楽」は悪なのか
こうした美奈子さんの選択は、決して特別なものではありません。
ハルメク生きかた上手研究所が実施した「住まい・暮らしに関する意識・実態調査2025」によると、50~79歳女性の55.3%が住まいの将来に不安を抱える一方、今の住まいに満足している人は75.3%にのぼります。
「できるだけ今の家に住み続けたい」と考える人が多いからこそ、老朽化への対応や家事負担を軽くする設備への関心が高まっているのです。
実際、リフォーム意向者の平均予算は約408万円。「楽をするため」ではなく、「これからも暮らし続けるため」の投資として、リフォームを考える人が増えています。
冬場の食器洗い、年間で4万円以上かかるケースも
夫は、食洗機の話になると決まってこう言いました。「お湯で洗えばいいじゃないか」
しかし、美奈子さん自身は、その言葉に強い違和感を覚えていました。
「お湯で洗うと、どうしても手荒れがひどくなるんです」
手袋を使って洗い物をしていた時期もありましたが、「汚れが落ちた気がしなくて、結局ゴシゴシ洗ってしまう」。そんな日々が続き、いつの間にか“水で洗う”ことが習慣になっていたといいます。
実はこの悩み、美奈子さんだけのものではありません。
パナソニックの調査によると、冬の食器洗いで最も負担に感じることの1位は「水の冷たさ」(34.0%)。その冷たさを避けるため、全体の77.0%が食器洗いに「お湯」を使っていることがわかっています。
一方で、「お湯を使うことでガス代と水道代が二重にかかっていること」を6割以上が意識しているにもかかわらず、「冷たい水を我慢するか、コストをかけてお湯を使うか」という選択を迫られ、結果的に多くの人が“寒さに勝てず”お湯を選んでいる実態も浮かび上がりました。
さらに、冬の食器洗いの負担として「手の乾燥・手荒れ」を挙げた人も21.8%と上位に入り、冬場の洗い物は「見えない出費」と「身体的負担」の両方を抱え込んでいることがわかります。それでもなお、「手洗いのほうが節約になる」という考えは根強いままです。
同調査では、「手洗いと食洗機、どちらが水道光熱費を節約できるか」という質問に対し、約4割が「手洗いの方が安い」と回答。実際には、手洗いの場合、水道代に加えて給湯に必要なガス代・電気代が重なり、年間で4万円以上かかるケースもあるとされています。一方、食洗機を使えば水や電気の使用量が抑えられ、年間2万円台に収まるという試算も示されています。
「我慢」より「続けられる暮らし」を
食洗機の導入は、最終的に認められました。
「全部を便利にする必要はない。でも、無理を続ける必要もない」
美奈子さんは、そう実感しています。
「若いころは我慢できたことも、年を取ると、ちゃんと体に返ってくるんですよね」便利さは、甘えではありません。それは、これからの生活を守るための“選択”です。
68歳の今、美奈子さんはようやくそう言えるようになりました。
「私さえ我慢すればいい」その言葉を、少しずつ手放す準備が始まっています。
[参考資料]
ハルメク 生きかた上手研究所「住まい・暮らしに関する意識・実態調査」
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