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年末年始がつらい敷地内同居
今年のお正月も、やはり楽ではありませんでした。
「普段は、本当に助けてもらっているんです。だからこそ、年末年始がつらいなんて、口に出しづらくて……」
そう話すのは、山梨県で暮らす近藤千夏さん(40歳・仮名)。夫(45歳)と小学4年生の娘(9歳)との3人暮らしで、敷地内には70代の義両親が住んでいます。
いわゆる敷地内同居です。大変そうに見られがちですが、千夏さん自身は「普段の関係は良好」だと感じてきました。
10年前、千夏さん夫妻は義両親の土地に家を建てました。ただし、建築費の援助は一切受けていません。
「お金を出してもらったら、家のことや暮らし方に口を出されると思ったので」
この考えには、夫も同意していました。義両親との関係を悪くしたいわけではない。ただ、お金を介さないことで、対等な距離でいたかったのです。
住宅ローンは残りましたが、その分、生活の主導権は自分たちにあります。結果として、それが義両親との“ちょうどいい距離”を保つことにつながりました。
共働きの千夏さんにとって、普段、義両親が娘の面倒を見てくれるのは大きな助け。義両親は年金生活で、夫婦2人合わせても月20万円に届かない収入です。
「体力的にも金銭的にも、あまり負担をかけたくない」
それは千夏さんだけでなく、夫も常々口にしていたことでした。だからこそ、普段はできるだけ頼りすぎないよう、バランスを取ってきたのです。ただし、年末年始を除いては……。
年末年始になると、毎回一気に膨らむ「見えない負担」
千夏さんが毎年、憂うつになるのは年末年始です。
夫の姉一家(4人)と弟一家(3人)が一斉に帰省し、義両親・千夏さん一家を含めると、最大で12人分の準備が必要になります。
・夫の姉一家:夫婦+小学5年生と中学1年生の兄弟(4人)
・夫の弟一家:夫婦+3歳の男の子(3人)
そこに千夏さん一家3人と義両親2人が加わり、総勢12人。
親戚同士の集まりへの参加は暗黙の了解で、高齢の義両親だけでは回らないため、自然と千夏さんと夫が“支える側”に回ります。
「仕事は年末ギリギリまであって、やっと休みに入ったと思ったら、そこからが本番、という感覚です」
普段は家事も育児も夫と分担しています。年末年始も、夫は力仕事や買い出しを引き受けてくれます。
それでも、料理の段取り、親戚への気配り、子どもたちの世話、細々とした調整役は、
気づけば千夏さんが担っていました。
表向きは「にぎやかなお正月」。けれど実際には、食費・日用品・光熱費が一気に跳ね上がる数日間でした。
お年玉は、合わせても1万円ほどで収まります。ただし、それで終わりではありません。
「普段、義両親にはお世話になっているから」
そう思って、おせちの追加、食材や飲み物、子ども向けのお菓子、紙皿や日用品を少しずつ買い足す。すると、気づけば年末年始だけで10万円近くが飛んでいくのです。
「一つひとつは大した額じゃないんです。でも、合計すると結構な金額で……」
義両親の年金暮らしを思うと、「ここは私たちが出そうか」と夫と話す場面も少なくありませんでした。
結果的に、“気遣いの出費”と“段取り役の労力”は、自然と千夏さん夫婦に集まっていきました。
「私だって、実家でのんびりしたい」
もう一つ、千夏さんの心に引っかかっていたのが義姉の存在です。義姉は東京で看護師として働いており、年末が近づくとこう言います。
「やっと実家でのんびりできる」
その言葉を聞くたび、胸に浮かぶ本音。
「私だって、実家でのんびりしたい」
千夏さんの実家も同じ県内にあります。それでも結婚してから、年末年始に帰省したことはありません。
「同じ県内なんだから、正月が終わってからでいいでしょう?」
誰かに言われたわけではありません。しかし、“嫁は年末年始はこちら側”という無言の空気を、確かに感じていました。
夫もそのことに気づいてはいましたが、「姉も弟も疲れているから」と、どこか板挟みになっていたといいます。
ひょんなことで可視化した「本当のコスト」
しかし、今年の年末年始が終わったあと、千夏さんの体と心は限界を迎えました。
「全部終わった途端、急に力が抜けてしまって。何もする気が起きなくなったんです」
高熱が出たわけでも、どこかを痛めたわけでもありません。ただ、強い疲労感と倦怠感が続き、仕事始めを前にしても体が思うように動かなかったといいます。
「寝ても疲れが取れない、頭が回らない。ああ、相当無理してたんだなって、やっと自覚しました」
年末年始の数日間は、気が張っている分、なんとか動けてしまう。けれど終わった途端に、その反動が一気に表に出たのです。
その様子を見て、夫も異変に気づきました。
「今まで、千夏がどれだけ回してくれていたか、やっと分かった」
準備、段取り、気配り、そして“誰かがやらなければ回らないこと”。それらが積み重なった結果が、目に見える形で現れた瞬間でした。
