(※写真はイメージです/PIXTA)

都市部での生活に区切りをつけ、自然に囲まれた環境でゆったりと老後を過ごしたい――。こうした“地方移住”への憧れは、定年を迎える世代を中心に根強くあります。実際、コロナ禍をきっかけに都市部から地方へ移る人は一時的に増えました。しかし総務省『住民基本台帳人口移動報告』によると、その後は再び都心回帰の動きがみられます。今回は、そんな「地方移住」に踏み出し、理想と現実のギャップに直面した60代夫婦のケースをみていきます。

退職金で手に入れた“憧れの古民家”

「第二の人生は、自然の中で静かに暮らしたいと思っていました。せっかく退職金があるなら、好きな土地で暮らしてみたくて…」

 

そう語るのは、東京都内で長年会社勤めをしてきた松永浩一さん(仮名・66歳)。妻の絵美さん(仮名・64歳)とともに、定年退職を機に長野県の中山間地域へ移住しました。

 

購入したのは、築60年の平屋の古民家。畑付きで価格は約1,100万円。東京のマンション価格を考えれば手の届きやすい金額で、夫婦は「これからは自分たちのペースで暮らせる」と期待を膨らませていたといいます。

 

ところが、生活が落ち着くにつれて、移住前には見えなかった現実が次々と浮かび上がってきました。

 

「病院もスーパーも遠くて、とにかく車がないと何もできない。東京では電車やバスで自由に動けていたので、その違いに戸惑いました」(絵美さん)

 

最寄りのスーパーまでは車で20分以上。通院や日用品の買い出しも、すべて運転が前提です。加えて、冬場の寒さと積雪は想像以上でした。

 

「雪かきは重労働ですし、高齢になると転倒のリスクも高い。2人だけでこの生活を続けられるのか、不安になることが増えました」(浩一さん)

 

移住前には数泊の“お試し滞在”も経験していましたが、短期間では季節ごとの厳しさまでは見えなかったといいます。

 

思わぬ負担となったのが、地域との関わり方でした。

 

「皆さん親切なんですが、やはり長年住んでいる人同士の関係が中心。自治会の行事や草刈り作業にも参加しましたが、どこかよそよそしさを感じてしまって…」(絵美さん)

 

浩一さんも、「田舎は人付き合いが温かい」と思っていたものの、それは地元出身者同士だからこそ成り立つ側面があると気づいたといいます。次第に外出が減り、家にこもりがちになる時間も増えていきました。

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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