資産1億6,000万円の父と距離ができた理由
都内近郊に住む会社員の山本さん(仮名・52歳)は、79歳になる父親との関係に悩んでいました。山本さんの父は、地方都市で中堅企業に長く勤め上げた元会社員。昭和の時代を生き抜いてきた人らしく、無口で厳格、他人に弱みを見せないタイプでした。
2年前に母親を亡くしてからは、親から受け継いだ土地に建つ戸建てで一人暮らしを続けています。年金は月18万円ほど。加えて、長年の貯蓄と相続による金融資産だけで約1億6,000万円(不動産は別)あるといいます。
経済的には、老後に不安を感じる状況ではありません。むしろ資産を使い切るほうが難しい状況です。ですが、山本さんの父はお金に対して、異様なほど神経質でした。
「俺が死ぬまでは俺の金。子どもには渡さない」
そんな言葉を、折に触れて繰り返していたといいます。
山本さん自身、父の資産をあてにしたことはありません。大学卒業と同時に家を出て就職し、結婚。いまは2人の子どもを育てる父親でもあります。「自分の人生は自分で歩いてきた」という自負がありました。
それでも気がかりだったのは、父の暮らしぶりです。母が亡くなって以来、友人や近所との付き合いはほとんどなく、趣味らしい趣味もない。日々の関心事は、株価の値動きと証券会社の担当者との電話だけのようでした。
もっと老後を幸せに生きてほしい……一人息子という責任感もあり、山本さんは父に声をかけました。「もう少し人と関わったほうがいいんじゃないか」「様子を見に、定期的に来ようか?」しかし、返ってきたのは、こんな言葉でした。
「余計なことをするな」「財産を狙っているのか?」
父のためを思っての提案が、まるで下心のある行為のように扱われたことに、山本さんは深く傷つきました。
「わかった、死ぬまで独りでやっていけばいいよ。もう連絡しないから」
こうして山本さんは父との交流を断ちました。しかし数ヵ月後、その関係に転機が訪れたのです。
