きわめてクリアな「申告分離課税」の制度
FX取引による所得は、「先物取引に係る雑所得等」となり、雑所得20%(所得税15%、地方税5%※復興特別所得税0.315%は含まず、以下同じ)の申告分離課税となっています。
平成23年までは、店頭でのFX取引は総合課税になっていて、その税率は最高50%(所得税40%、地方税10%)となっていました。それに比べれば計算が簡便で有利になったことはもちろん、他の金融商品と同列に並ぶ20%の申告分離課税は、日本の所得関連税率の中では比較的低く、かつ累進課税でないため、きわめてクリアになっています。その意味で、個人でFX をおこなうメリットは、一定の条件下においては十分にあると言うことができます。
個人のFX取引で認められる経費はきわめて限定的
既に述べたとおり、個人でFX 会社の口座を持って取引を行う。ごくごく一般的です。しかし、個人で行うことは次のようなデメリットがあるのも事実です。よく知られているものは以下、
・レバレッジ規制
ハイリスクハイリターンの代名詞だったFX も、証拠金に対して建てられるポジションはだんだんと下がってきて、今や25倍となっています。25倍で十分という考え方がある一方、わずかにある確実な(と思われる)利ざやを、一時的に大量のポジションを取って得るような手法を取ることができず、投資手法の制約となっているのも事実です。
・損失の繰越が3 年しかできない。
平成24年からは、「くりっく365」「大証FX」だけでなく、店頭取引も損失を3 年間繰り越すことができるようになりました。その点は良い方向へ進んでいるわけですが、3 年しか繰り越せないというのも事実です。このことは、次に示す「損益通算の範囲が限定的」ということと合わせて、個人でFX 取引を行うことのデメリットとなっています。
・ 損益通算の範囲が限定的
FXの所得は「先物取引に係る雑所得等」となります。損失が発生した場合には、他の「先物取引に係る雑所得等」との損益通算は可能ですが、それ以外の所得との損益通算はできません。つまり、FX の損失を、給与所得はもちろんとして、不動産投資による利益(不動産所得)、他のビジネスを手がけることによって得られた利益(事業所得)などと相殺することはできないことになっています。
これは逆もしかり。FX で得た利益と、不動産投資による損失(不動産所得)、あるいは他のビジネスを手がけることによって生じた損失(事業所得)などと相殺することもできません。
・経費に認められるものが少ない。
個人でFX を行なった場合、経費と認められるものはかなり限定的です。主に計上が認められるであろう経費項目を列挙すると下記のとおりです。
⑴取引口座開設のための諸費用(銀行手数料等)
⑵FX投資セミナー参加費
⑶資料代(本代)
⑷ツール代(投資プログラム購入費等)
⑸電話、インターネットなどの通信費のうち、FX 取引に必要と主張できる部分
⑹上記のための移動に用いた交通費
これ以外にも個人でFX を行なうことに必須と主張できるのであれば経費にできますがそう多くはありません。
・取引結果が個人に直接帰属する。
FXを個人で行えば、その所得は当然に個人に帰属します。多額の利益を上げたら、当然すべては個人資産となりますから、これを親族等に移転しようと思ったら、贈与税や相続税のフィルターを通らなければなりません。裏を返すと、このことは、所得の分散や相続税対策の観点からは決して望ましいとは言えません。
・副業とみなされる可能性がある。
取引結果が個人に帰属する以上、FXを個人で行えば、その所得税や住民税に影響を与えます。株式やFXでの投資が副業と認定されることは少ないでしょうが、会社で天引きされる住民税が大きく動いた場合には、何か会社の業務以外のものをやっているのではないか?と疑われることになります。
ただし、そうならないためには、個人の確定申告書において下記の部分、「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」において「自分で納付」にチェックを入れることで、FX のような給与所得以外の住民税は会社にはいかないことになっています。
・個人海外FX の利益と損失は不利
海外FX で利益がでると、累進課税によって20%より高い税率が適用されることになります。また、損失がでていてもそれを繰越すことはできません。状況にもよりますが、海外FX では勝ちすぎても負けすぎてもハイレバレッジ以外の点で税金面ではあまり良いことがないようです。また、以前から、投資詐欺だけではなく、資金引出し不能や手続き遅延リスクが高いので私共ASC でもおすすめはしていません。
【図表】 住民税に関する事項