消費増税と追加緩和が、世界経済を混乱に陥れる!?
昔から深刻な国内問題の原因を対外要因に転嫁するのは、国際政治上の常套手段である。
本連載で詳述するように、むしろ日本国内の要因、とくに8%消費増税や、黒田日銀の行きすぎた追加緩和こそが、わが国の経済と東京市場を長期低迷に追いやっているばかりか、世界経済と国際金融市場全体を混乱に陥れているとさえいえるのである。
完全に裏目に出た「マイナス金利政策」の導入
ここでは、その一例を簡単に紹介しておこう。
2008年の世界的金融危機以降、世界経済を牽引してきたアメリカ経済。その最大雇用と物価安定を司るFRBが、約10年ぶりに政策金利を引き上げたのが2015年12月16日。これによりFRBは、それまでの事実上のゼロ金利政策からの正常化を模索しはじめた。
これに対して、黒田日銀は2日後の12月18日、量的・質的金融緩和第2弾の補完策「バズーカ3」を決めた。
さらに、1カ月後の2016年1月29日には、「原油価格の一段の下落に加え、中国をはじめとする新興国・資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定となっている」として、マイナス金利政策を導入したのである。
黒田日銀のマイナス金利政策は、明らかに円安・株高をねらったものだった。マイナス金利政策は、そもそもデンマークで同国の通貨クローネが対ユーロで割高となることを回避する通貨安戦略のひとつとして生まれた経緯がある。
だが、2014年10月末に行ったQQE拡大策(QQE2)のようにサプライズをねらった黒田日銀のマイナス金利政策の導入は、完全に裏目に出た。
なぜなら、マイナス金利政策の導入からほぼ3日後に、市場は急激に円高・株安の動きに転じたからだ。世界経済の減速懸念などを嫌気してアメリカの長期金利が急低下したことで、日本とアメリカの長期金利差が縮小したことなどが背景にあった。
マイナス金利政策は通貨安競争が激化する懸念を増幅させ、2月下旬の上海G20における各国通貨の競争的切り下げ回避の合意につながってしまった。結局、黒田日銀のマイナス金利政策は失敗し、自己破滅に終わったといえるだろう。