今回は、黒田日銀による、マイナス金利政策の効果について見ていきます。※本連載は、マクロ・インベストメント・リサーチの代表で、最新の経済データを駆使した独自理論が高く評価されている中丸友一郎氏の著書、『2017年 日銀破綻』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、2017年から始まるとされる、円高から円暴落、株式大暴落へのシナリオを読み解きます。

3日ももたずに円安効果が剥落

この電撃的な日銀のマイナス金利政策に対して、筆者は思わず反射的にブログに次のように書き込んだ。

 

「金融緩和の効果にも収穫逓減の法則がある。ゼロ金利政策から多少のマイナス金利政策を実施しても、短期的な通貨や株価の動きは別として、雇用、物価、そして経済成長にどれほどのインパクトがあるのだろうか。一方、マイナス金利で銀行の収益が悪化することはほぼ確実。これで、金融市場が日銀の意図に反して動けば、黒田日銀はいよいよ瀬戸際まで追いつめられることになろう」

 

マイナス金利政策は、ほかの事情を一定とすれば、円安を後押しするため、1月29日の導入決定後、いったんは円安に振れたが、3日ももたずに円安効果は剥落したかたちになった。いわば「三日天下」に終わった黒田日銀のマイナス金利政策だが、その後は〝劇薬〟の副作用のみが優勢となった。

 

実際、2016年2月11日のロンドン市場では、ドル・円レートが、一時、1ドル=110円台まで値上がりするなど円高・ドル安が急激に進み、翌12日の東京株式市場は続落で始まり、一時、株価も1年4カ月ぶりに1万5000円台を割り込んだ。

 

つまり、当時、「日銀の防衛ライン」と市場で見なされていた1ドル=115円を超えた円高水準を一気に突き抜けたかたちとなった。

 

マイナス金利政策は、表面的には内外の金利差を拡大させ、円安が進展してもよさそうなものだ。だが、実体経済への初の導入の影響は未知数。金融機関への影響など副作用に注意が払われたことや、中国経済の先行き、アメリカの経済指標が力強さに欠くなど、海外の不安要因によって円安効果が完全に打ち消された格好となった。

 

懸念は追加緩和策の選択肢が限られることだ。黒田総裁はマイナス金利幅のさらなる拡大も否定しないが、2013年4月、2014年10月のバズーカ砲にくらべると効果は少なくとも不透明である。

黒田日銀は市場の「カモ」に!?

黒田総裁はマイナス金利政策導入を決定した3日後の講演で、金融政策の限界を否定しながら、最後に、

 

「2%の物価目標の実現のために、できることは何でもやる」

 

と、めずらしく気色ばんだという。

 

しかし、中長期的に効果が見込めない〝劇薬〟を投入して、強い決意だけを表明しても、ゲーム理論でいう「空脅し」(empty threat)にすぎないだろう。実際、市場は「空脅し」を見透かして、日銀の意図とは正反対に動いた。つまり、円高・株安というリスクオフの動きが強化されたのだ。

 

ひるがえって、黒田日銀によるハロウィーンバズーカの資産市場に対する期待どおりの効果があったのは、2014年11月からチャイナショック前の2015年7月までの9カ月間程度だったと見てよいかもしれない。

 

2016年1月29日の黒田日銀によるマイナス金利導入によって、市場は一時、円安・株高のリスクオンに動いたが、それもわずか三日天下に終わった。仮に、次の追加緩和があったとしても、今度はいったいどれだけもつのだろうか。

 

なお、「自然利子率(景気に中立的な実質利子率)が大幅マイナスの状態では金融政策が無効」になることを、2015年6月に上梓した『大儲けできる株はどっち?』(徳間書店)のなかで図示して詳述しているので、ぜひ参考にしていただきたい。

 

黒田日銀は市場のカモにされはじめたと見たほうが賢明だろう。

2017年 日銀破綻

2017年 日銀破綻

中丸 友一郎

徳間書店

黒田日銀のマイナス金利・異次元緩和の副作用が、2017年5月に炸裂する! マイナス金利により国債保有を控え始めた国内銀行。やがて日銀は債務超過に陥り、国際マネーの餌食となる! 2017年から始まる円高から円暴落、株…

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