ねえ、一緒に住まない?資産評価額2億2,900万円だが…相続税は約4,200万円。80歳女性が次男夫婦との同居を望んだ「のっぴきならない事情」【相続の専門家が解説】

ねえ、一緒に住まない?資産評価額2億2,900万円だが…相続税は約4,200万円。80歳女性が次男夫婦との同居を望んだ「のっぴきならない事情」【相続の専門家が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「相続はまだ先の話」と思っていても、不動産を複数所有しているご家庭では、気づかぬうちに多額の相続税が発生するケースが少なくありません。今回ご相談に来られたのは、障害のある長男ではなく、次男に多く相続させたいと考える80歳目前のお母様。家族構成や資産内容を丁寧に整理し、制度を正しく使うことで、相続税を大幅に減らす道が見えてきました。実際の事例をもとに、相続実務士・曽根惠子氏(株式会社夢相続 代表取締役)が解説します。

節税対策のポイントは「同居」と「不動産の評価減」

提示したシミュレーションでは、対策をすることで相続税が 半分以下にまで減らせる 可能性が見えてきました。順に解説します。

 

①自宅に健太郎さんが同居すると評価額が80%下がる(小規模宅地等の特例)

今回最大の節税効果になるのが特例を適用することです。小規模宅地等の特例(同居特例)──自宅の土地の評価が 80%減。

 

自宅土地(約7,475万円)は、なんと 約1,475万円 まで評価が下がります。節税効果はおよそ 2,400万円。

 

つまり、同居するだけで相続税が半分近く減る、という非常に効果的な制度です。

 

同居するための現実的な方法


・3階をリフォームして健太郎さん夫婦が住めるようにする


これにより、

①家族の生活が安定
②母親の見守りが可能
③相続税が大幅減

という “三方よし” の状態になります。

②アパート(貸付不動産)は50%評価減の対象

健太郎さんの母親は都内の別の場所に8世帯の賃貸アパートをお持ちです。

 

貸付不動産は「貸付宅地特例」の対象となり、土地評価が50%減。

 

約8,000万円 → 約4,000万円へ評価減。

 

建物も「固定資産税評価」がベースになるため、市場価格よりかなり低くなります。

③工場用地も評価減

地方の工場用地は借地権割合などを考慮すると、実勢価格より評価が下がりやすい資産です。今回の試算では、約3,100万円 → 約1,860万円という大幅な圧縮が可能と見込まれます。

④預貯金は“不動産への資産組み替え”で評価減に

預金3,000万円は、そのままだと 3,000万円のまま評価されます。

 

しかし、


・相続税対策になる不動産
・収益を生む不動産

 

へ組み換えると評価が大きく下がります。

 

さらに、年金不安のあるご家庭では「老後資金確保」の意味でも重要です。

節税後の財産総額は約1億1,000万円

ここまでの特例を適用した結果がこちらです。

資産区分 特例前 特例後
自宅(土地+建物) 約8,475万円 約1,475万円
賃貸アパート 約9,500万円 約4,750万円
地方の土地・建物 約3,100万円 約1,860万円
預貯金+保険 約4,000万円 約3,000万円
合計 約2億2,900万円 約1億1,000万円

約1億円の評価減に成功。相続税はおおよそ半分程度まで下がる見込みとなります。

さらに重要なのは「遺言書」

資産が整理できたら、次に必要なのが公正証書遺言の作成です。

特に今回は…

 

・長男には生活資金が十分ある
・健太郎さんに多めに遺す理由も明確

 

という背景があるため、公平性の説明 をしっかり文面に残しておくことがとても大切です。

今後のアクションプラン(時系列)

対策は段階的に行うことが大切です。今回のご家庭の場合、以下の流れが最もスムーズです。

 

【〜数ヶ月以内】
・家族会議 → 健太郎さん同居の可否を決定
・母親の意思確認
・遺言の方針を確定

 

【半年以内】
・公正証書遺言の作成
・自宅3階のリフォーム計画
・不動産や預金の配分確認

 

【1年以内】
・正式な財産評価書の作成
(精密評価により60万円前後)

 

【継続的に】
・不動産の見直し
・税制改正への対応
・毎年の現金・保険の管理

相続実務士が見た今回の“成功ポイント”

今回の健太郎さんのケースは、節税の余地が非常に大きく、対策をすれば相続税が劇的に変わる典型例でした。特に重要だったのは以下の3点です。

① 自宅に「同居できる状況」があった
同居できる家族がいるだけで節税額は数千万円単位で変わります。

② アパート・工場用地など“不動産が多い”
不動産は評価を下げる余地が大きく、節税の中心になります。

③ 母親の意思が明確
「健太郎さんに多く遺したい」とはっきりされていたため、遺言の方向性が見えやすい。
健太郎さんは方向性が見えたので、早急にお母さん、お兄さんと話をするということです。

相続は“早く取り組んだ人が勝つ”

今回の健太郎さんのように、


・親が80歳前後
・不動産を複数所有
・兄弟間の公平性に課題がある

 

というご家庭は非常に多く、相続対策が“遅れると損をする”典型でもあります。特に同居特例は「いつ同居を始めたか」が極めて重要 です。

 

 

曽根 惠子
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®

株式会社夢相続 代表取締役

 

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

 

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