「都会のほうが、よっぽど楽に暮らせるかも」
ある日、東京の長男家族を訪ねた際のこと。自宅近くにあるURの団地や、駅から徒歩圏のスーパー・病院などを見たとき、ふたりの考えは大きく変わりました。
「コンパクトだけど便利。東京って、シニアに優しいかも」と裕子さん。「ご近所づきあいも最小限で済むし、図書館もカフェもあって、刺激がある」と正彦さんも頷きました。
帰宅後、ふたりは何度も話し合いを重ね、「田舎を売って、東京に戻ろう」と決断。幸い、地方での住まいは古民家ブームの影響で若い世代の購入希望者が現れ、移住支援制度を活用して無事売却に至りました。
現在、伊藤さん夫婦は都内のUR賃貸住宅に住み、週に数回、近くの健康体操や市のシニアカフェに参加しています。
「“老後は田舎”っていうのは幻想だったかも。でも、やってみたからこそ分かったこともある。今が一番、心が軽いです」と語るふたりの表情は晴れやかでした。
地方自治体では近年、高齢者の移住支援制度に加え、「都市部から戻る人」へのUターン支援も整備されつつあります。また、UR賃貸住宅や高齢者向け住宅では、バリアフリー化や見守りサービスなどの導入も進んでおり、「高齢期の都市生活」の選択肢は広がりを見せています。
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