(※写真はイメージです/PIXTA)

実家の片付け中に“親の意外な一面”を知ることがあります。昔の手紙、日記帳、古びた通帳や保険証書……そこには、親が子に語らなかったもう一つの人生が刻まれていることも。見慣れたはずの我が家の中に、思いもよらぬ「過去」がひっそりと残されていることもあるのです。

実家の片隅に置かれていた「白い封筒」

「最初は、ただの領収書か何かかと思いました」

 

そう語るのは、東京都内に住む会社員・村上和也さん(50歳・仮名)。2年前に亡くなった母の三回忌を機に、築40年の実家を整理しようと姉とともに訪れた際の出来事でした。

 

両親が住んでいた和室の引き出しの奥。埃をかぶった封筒に「昭和58年」「第XX区民生委員」などと書かれた手紙が数枚。それは、かつて母が地域の民生委員として活動していたときのものでした。

 

「母がボランティア活動をしていたなんて、全然知らなかったんです」

 

封筒の中には、当時の記録ノートや配布資料、手書きの相談メモなどもありました。内容にはプライベートな相談事も記されており、高齢者の独居生活、生活保護の手続き、DV被害の相談など多岐にわたっていました。

 

和也さんの記憶の中の母は、「家事と父の世話を一手に引き受ける、専業主婦としての母」でした。しかし、民生委員として地域の課題に奔走していた姿を知り、「知らない母がいた」ことに複雑な感情が湧いたといいます。

 

「もっと話を聞いてあげればよかった、そんな気持ちになりました」

 

とくに印象的だったのは、「話し相手がいないのが一番つらい」という高齢者からの相談に対し、母が「できるだけ顔を出しますね」と書き記していた一文でした。家庭では寡黙だった母が、他人の悩みに耳を傾け、誰かの孤独を和らげようとしていた事実に、思わず涙がこぼれたといいます。

 

実は、こうした地域での支え合いの仕組みは「民生委員・児童委員制度」という公的制度に基づいて運営されています。

 

厚生労働省によれば、民生委員・児童委員とは、住民の立場から地域福祉の担い手となるボランティアであり、非常勤・無報酬で活動しています(報酬ではなく「活動費の一部補助」がある場合あり)。

 

2023年時点で、全国には約23万人の民生委員・児童委員がおり、その多くが60代~70代の高齢者です。退職後のセカンドキャリアや「地域貢献」の一環として活動を始める人も多く、日々の見守りや生活相談、行政との橋渡しなど、実は地域の福祉インフラを陰で支えている存在でもあります。

 

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