(※写真はイメージです/PIXTA)

毎年楽しみにしていた母校の学園祭。けれど離婚して迎えた今年だけは、友人たちの“順風満帆な人生”がこれほど眩しく見えた年はありません。地盤の強さ、家庭の安定、キャリア……45歳の夏帆さんは、胸の奥に生まれた「羨ましい」という感情と初めて正面から向き合うことになりました。

理想が破綻を招く「対等性のジレンマ」

高学歴・高収入カップルほど「キャリアも家事も完全に対等であるべき」という強い理想を持ちがちだと言われています。

 

同調査では、この“対等性のジレンマ”こそ、現代夫婦の不満を生み出す温床だと指摘されています。

 

夏帆さんもこう振り返ります。

 

「『私ばっかり頑張ってる?』『あなたも何か返してよ』って、お互いが無意識に“貸し借り”を数えるようになって……。家なのに安らげないんです」

 

家庭は休む場所ではなく、どちらがどれだけ負担したかを暗算し続ける“戦場”のようになっていきました。

 

さらに夫婦で話す時間も極端に減りました。

 

「向き合って話す時間も気力もなくて。気づいたら、夫婦じゃなくて“ただの同居人”になっていました」

 

こうして静かに距離が生まれ、離婚に至りました。

 

離婚後、同級生の“地盤の強さ”が刺さる理由

「私もキャリアアップして頑張ってきた。でも、同級生と違うのは、やっぱり地盤の強さなんです」

 

夏帆さんの両親は、地方で少ない年金暮らし。弱っていた離婚直後も、「心配させたくない」と頼れませんでした。

 

「両親にお金がないのは私のせいでもあるんです。地方の中高一貫の私立から東京の大学まで出してもらいました。両親は私に全てを注いでくれたんです」

 

両親へ感謝する一方で、夏帆さんはこう思ってしまう瞬間があるのだといいます。

 

「なんで私は地方から出てきて、一人でマンションのローン払って、必死で働いてるんだろう……って、たまに虚しくなるんです」

 

実家が支えてくれる友人。外国へ広がる選択肢を持つ友人。家族のサポートで余裕のある友人。

 

今の夏帆さんにとってはすべてが、まぶしく見えました。

「羨ましい」と認めた瞬間、少しだけ楽になった

「羨ましいなんて思う自分が嫌だった。でも、正直に認めたら少し楽になったんです。さすがにインターに子供を通わせる友人にまで『羨ましい!』って思ったときは『自分、どうかしているな』と思いました。ここまできたらイチャモンに近いですよね。って思ったら笑えてきました。それに毎年こうして学祭に来れて、素晴らしい友人たちと再会できるなんて、なんて幸せなんだろうって気づいたんです」

 

羨望も嫉妬も、自分を責めたい気持ちも、全部、ひとりで頑張ってきた証。

 

「私は私の人生を歩くしかない。でも、頑張ってきた自分を責めるのはもうやめよう、って思えたんです」

 

45歳、人生の折り返し地点。あの日の学園祭でこみ上げた気持ちは、夏帆さんが再び自分の人生と向き合うための、静かな始まりなのかもしれません。

 

[参考資料]
CAREER FOCUS「キャリアと夫婦関係・離婚に関する実態調査」

 

 

 

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