理想が破綻を招く「対等性のジレンマ」
高学歴・高収入カップルほど「キャリアも家事も完全に対等であるべき」という強い理想を持ちがちだと言われています。
同調査では、この“対等性のジレンマ”こそ、現代夫婦の不満を生み出す温床だと指摘されています。
夏帆さんもこう振り返ります。
「『私ばっかり頑張ってる?』『あなたも何か返してよ』って、お互いが無意識に“貸し借り”を数えるようになって……。家なのに安らげないんです」
家庭は休む場所ではなく、どちらがどれだけ負担したかを暗算し続ける“戦場”のようになっていきました。
さらに夫婦で話す時間も極端に減りました。
「向き合って話す時間も気力もなくて。気づいたら、夫婦じゃなくて“ただの同居人”になっていました」
こうして静かに距離が生まれ、離婚に至りました。
離婚後、同級生の“地盤の強さ”が刺さる理由
「私もキャリアアップして頑張ってきた。でも、同級生と違うのは、やっぱり地盤の強さなんです」
夏帆さんの両親は、地方で少ない年金暮らし。弱っていた離婚直後も、「心配させたくない」と頼れませんでした。
「両親にお金がないのは私のせいでもあるんです。地方の中高一貫の私立から東京の大学まで出してもらいました。両親は私に全てを注いでくれたんです」
両親へ感謝する一方で、夏帆さんはこう思ってしまう瞬間があるのだといいます。
「なんで私は地方から出てきて、一人でマンションのローン払って、必死で働いてるんだろう……って、たまに虚しくなるんです」
実家が支えてくれる友人。外国へ広がる選択肢を持つ友人。家族のサポートで余裕のある友人。
今の夏帆さんにとってはすべてが、まぶしく見えました。
「羨ましい」と認めた瞬間、少しだけ楽になった
「羨ましいなんて思う自分が嫌だった。でも、正直に認めたら少し楽になったんです。さすがにインターに子供を通わせる友人にまで『羨ましい!』って思ったときは『自分、どうかしているな』と思いました。ここまできたらイチャモンに近いですよね。って思ったら笑えてきました。それに毎年こうして学祭に来れて、素晴らしい友人たちと再会できるなんて、なんて幸せなんだろうって気づいたんです」
羨望も嫉妬も、自分を責めたい気持ちも、全部、ひとりで頑張ってきた証。
「私は私の人生を歩くしかない。でも、頑張ってきた自分を責めるのはもうやめよう、って思えたんです」
45歳、人生の折り返し地点。あの日の学園祭でこみ上げた気持ちは、夏帆さんが再び自分の人生と向き合うための、静かな始まりなのかもしれません。
[参考資料]
CAREER FOCUS「キャリアと夫婦関係・離婚に関する実態調査」
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