長生きしませんように…〈残高120万円〉の通帳を握りしめ、69歳専業主婦がポツリ。享年75歳・優しい夫が「哀しい嘘」をついたワケ

長生きしませんように…〈残高120万円〉の通帳を握りしめ、69歳専業主婦がポツリ。享年75歳・優しい夫が「哀しい嘘」をついたワケ

長年生活を共にしている夫婦でも、「相手の収入を知らない」「家計の詳細を共有していない」というケースは少なくありません。しかし、そうした状況が思わぬ事態をもたらし、自分だけでなく子や孫など家族の人生にも影響を与えるケースがあります。今回は、夫の急死によって生活が一変した専業主婦の事例をもとに、家計を把握していないリスクについて考えていきます。

守られて生きてきた…専業主婦48年、夫急死で直面した現実

田中和香子さん(仮名・69歳)は、高校卒業と同時に地方で就職。事務員として就職し、3年後に6歳年上の営業マンの夫と結婚しました。当時はまだ「結婚したら退社」が一般的な時代。和香子さんも専業主婦として家庭を支え、一人娘を育て上げました。

 

和香子さん自身、父が稼ぎ母が家を守るという家庭で育ちました。また、働いてみれば大変なことも多く、「早く家庭に入りたい」と結婚に憧れ、それを21歳にして実現したのです。

 

年上の夫が稼ぎ、お金も管理。和香子さんは、毎月もらえる家計の中で慎ましく暮らせれば十分と思っていました。働きたいという気持ちを持つこともなく家庭を守り続け、年金暮らしに突入しました。

 

しかし、夫が心筋梗塞で急死したことで、和香子さんの生活は一変。夫は65歳で仕事を辞めてから交通整理のアルバイトを続けており、その最中のことでした。

 

突然の別れに呆然とする和香子さん。葬儀を終えると、すぐに「お金のことが何もわからない」という問題に直面しました。

 

自分名義の貯蓄はゼロ。家庭の貯金はすべて夫名義で管理され、キャッシュカードの暗証番号もわかりません。銀行窓口では、配偶者でも名義人以外は引き出せないと説明されました。そこで、子どもたちの協力を得て、手続きを進めるしかありませんでした。

 

その後、銀行の残高を確認したとき、いち早く「えっ?」と叫んだのは長女でした。というのも、残高は120万円ほど。別の通帳は見つからず、生命保険(死亡保険)の加入履歴もなかったのです。

 

夫は健康維持や暇つぶしのためにアルバイトをしていた。和香子さんはそう思っていましたが、長女は「お金を稼ぐためにやらざるを得なくて、嘘ついていたんだね……」と呟きました。

 

ギャンブルや投資などをしていた形跡はありません。子ども2人の教育費、思ったようには増えなかった収入、妻を抱えながら1馬力での暮らし。その中で、贅沢をしていなくとも十分な貯蓄は残せなかったのだと推測されました。

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