日本で定時に帰るZ世代の若者が増える一方、ドイツ・イギリス・北欧では「サービス残業」が蔓延中…欧州の若者が“タダ働き”を選ぶ切実な理由

日本で定時に帰るZ世代の若者が増える一方、ドイツ・イギリス・北欧では「サービス残業」が蔓延中…欧州の若者が“タダ働き”を選ぶ切実な理由
(※写真はイメージです/PIXTA)

10年ほど前、「働き方改革」によって、「長時間労働=ブラック企業の証」という認識が定着した日本。メディアでは、対比として欧米の「成果主義」が盛んに取り上げられ、「日本も長時間労働をやめ、欧米に倣うべきだ」と報じられます。ところが、多くのメディアが取り上げる「理想的な海外の働き方」と実態は乖離があるようで……。木村琢磨氏の著書『社内政治の科学』(日経BP)より、日本における長時間労働のとらえかたの変化と海外の「熱意アピール」の現状についてみていきましょう。

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「欧米は労働時間でアピールしない」という誤解の“真相”

では、なぜ日本では「欧米は労働時間でアピールしない」ということが広く信じられているのでしょうか? その理由の一つは、日本と欧米の人事制度や慣行の違いに関する認識です。

 

日本でも、成果主義の人事制度は広く導入されるようになりました。しかし現在でも、成果にかかわらず地道な努力が美徳とされる傾向があります。

 

「結果よりもプロセスが大事」と語られる場面も少なくありません。上司や同僚も「一生懸命働く姿」を見て評価する傾向も残っています。特に評価基準が曖昧なときには、労働時間が努力の証とみなされてきました。

 

一方で欧米では、「成果重視」「職務の明確化」が重視されていると言われます。特にアメリカでは、職務記述書(ジョブディスクリプション)に基づいて業務が割り当てられます。そして、その目標達成度によって定量的に評価されます。そのため、日本人の間では「海外では労働時間が評価に影響しない」というイメージが広まりやすいのです。

 

「欧米では長時間働いても評価されない」「欧米企業では労働時間の長さにかかわらず成果さえ出せば評価される」という認識があります。こうした見方は、日本の働き方改革やメディアでも繰り返し紹介されてきました。そのため「欧米には労働時間でアピールする文化がない」と多くの日本人が信じています。

 

しかし実際には、欧米でも早朝出勤や残業を通じて熱心さや責任感を示すことがあります(Bolino, 1999)。

 

日本のメディアで報道される「理想的な海外の働き方」

また、実際の労働時間の違いや、それに関する報道や啓発の影響も考えられます。たとえば

 

・欧米ではワーク・ライフ・バランスの考え方が浸透していて、早めの退社や長期休暇を大切にする姿勢が見られる。

・ドイツや北欧諸国では、夕方にはオフィスが閑散とする。これらの国々では、勤務時間内に効率的に仕事を終えることが評価される。

 

こうした姿が、メディアや研修などで「理想的な海外の働き方」として紹介されてきました。そのため、「海外では長時間働かない」という印象が形成されてきたのです。

 

一方で、日本では電通の過労自殺事件をきっかけに「長時間労働=悪」という認識が広がりました。その対比として「欧米=健全な労働文化」という構図も生まれました。

 

この対比は、日本の働き方を変える必要性を強調する目的では効果的でした。しかしその結果、実際には海外にもある「労働時間を使った熱意のアピール」が見過ごされてきたとも言えます。

欧州でも「サービス残業」が蔓延している

最近の学術研究として、ギリェルモ・オルファオらは、欧州の国々でもサービス残業(unpaid overtime)が蔓延していることを明らかにしました。そのような国には、日本では「残業しない国」のイメージがあるドイツ、イギリス、さらには北欧のスウェーデンやデンマークなども含まれます。

 

オルファオらは、特に若手社員たちが、意欲や忠誠心をアピールするため、そして将来の見返りとしての昇給や昇進を期待してサービス残業をすることを指摘しました(Orfao et al.,2024)。

 

残業、特にサービス残業による熱心さアピールは「昭和の遺物」のように見えるかもしれません。しかし、若年失業率が高い欧州では、不安定な立場に置かれた若者たちは、キャリア戦略として長時間労働による熱心さアピールをせざるを得ない状況に置かれているようです。

 

 

木村 琢磨

博士

昭和女子大学 教授

 

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※本連載は、木村琢磨氏による著書『社内政治の科学』(日経BP)より一部を抜粋・再編集したものです。

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木村 琢磨

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