高収入世帯を中心に高まる「高齢者医療費」の自己負担
ふくれあがる医療費を抑えるため、国は医療費制度の仕組みを変えざるを得ませんでした。2002年には健康保険法が改正され、高齢者の自己負担が定率1割(上限あり)に定められました。また、現役世代並みの収入がある高齢者は、医療費の2割を負担するようになったのです。
こうした制度改革は、その後も続きました。2006年からは、現役世代並みの収入がある高齢者は、医療費の3割を自己負担するようになりました。さらに2008年には、70~74歳は医療費の2割を負担することになったのです。
また、日本では高額療養費の自己負担額には限度額が定められています。どんなに医療費がかかっても、1か月の医療費が一定の金額を超えた場合は払い戻しが受けられます。この上限額に関しても2015年に制度改正が行われました。この改正により、高額療養費の限度額が引き上げられた人は少なくありません。
例えば、年収が770万円を超える人が4か月以上入院した場合、2014年12月までなら医療費の自己負担額の上限は月8万3400円でした。ところが、2015年1月以降は、9万3000円に引き上げられました。また、年収が1160万円を超える人の場合、医療費の上限は月8万3400円から14万100円へと大きく跳ね上がりました。高収入世帯を中心に、高齢者医療費の負担は高まる一方です。
こうした取り組みによって国民医療費は増え続けて、2014年の国民医療費は40兆610億円に達しました。また、65歳未満の1人当たりの国民医療費が年17万7700円だったのに対し、65歳以上は72万4500円となっています。
【図表1】 高額医療費制度の変更
【図表2】 70歳以上の患者自己負担の推移
世界で最悪の水準の「国債残高」の対GDP比
増えていくのは国民医療費だけではありません。年金の総支給額も増大する一方です。厚生労働省の「平成26年度社会保険事業の概況」によると、2010年度に支払われた国民年金の総額は18兆5352億円でしたが、2014年度には21兆3040億円になりました。わずか4年で15%も増えたのです。
国民医療費と年金支給額が加速度的に増加しているのに対し、景気低迷によって税収は伸び悩んでいます。その結果、国の借金は増える一方です。
財務省によると、2016年度末の国債残高は838兆円に達する見込みです。これは、税収(2016年度の場合、約58兆円)の約15年分に相当します。一般家庭にたとえるなら、年収580万円の世帯が、8380万円の借金を抱えたようなものです。
また、国債残高の対GDP比は230%を超えました。これは、金融危機に陥ったギリシャを上回り、世界で最悪の水準です。
【図表3】 公債残高の累増