今回は、高齢者の「介護リスク」が高まる理由を探ります。※本連載では、高齢者が貧困に陥るきっかけとなる無駄な医療を受けずに、人生をまっとうするために知っておくべきことについて、データを基に解説します。

近年、高齢者のタンパク質・エネルギー不足が問題に

高齢になると加齢による影響で、噛む力や飲み込む力が低下します。また同時に唾液や消化液の分泌も減少。腸の動きも低下して、自然に固いものや繊維質の食物を避けるようになり、肉・野菜・果物などが不足しやすくなります。また、味覚も低下するため、次第に味の濃いものを好むようになり、糖分・塩分の摂取量が多くなります。

 

そのため、食費を倹約しようと思っていない人でも、自分では気づかないうちに栄養素が不足した低栄養状態になりやすくなります。

 

最初のうちは体内の貯蔵栄養素を利用することで代謝を維持し体力を保持しようとするため、体重減少(痩せ)や骨格筋の筋肉量低下が起こり、感染も起こしやすくなります。近年、このように高齢者ではタンパク質・エネルギー低栄養状態が大きな問題となっており、「protein energy malnutrition; PEM」ともいわれています。

栄養不足が続くことで起こる「フレイル」状態とは?

さらに、このような低栄養状態が続くことで健康な状態と要介護状態の中間である「フレイル」という状態になります。

 

フレイルの状態になると、要介護状態になりやすくなるだけでなく、運動機能も低下し、ちょっとした段差につまずいて転倒して骨折、それがきっかけで寝たきりになってしまいます。そのようにして要介護状態につながっているのです。

 

最新の研究では、動物性タンパク質(肉や魚貝類、卵など)を多く摂取している高齢者の方が、植物性タンパク質が中心の高齢者に比べ、老化の速度が遅く、病気になりにくいことが分かってきました。つまり、動物性タンパク質を効率的に体に取り入れ、体の栄養状態を高めながら生活活動度を高く保つことが大切なのです。

 

人間の身体は、食べ物から得られた栄養素でできています。もし、食費を削って栄養バランスが崩れると、体調が悪くなったり、病気になったりする危険性が高まります。倹約しようとした結果、さらに医療費がかかるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。

 

[図表]栄養不良の世代間サイクル

長寿大国日本と「下流老人」

長寿大国日本と「下流老人」

森 亮太

幻冬舎メディアコンサルティング

日本が超高齢社会に突入し、社会保障費の急膨張が問題になっている昨今、高齢者の中で医療を受けられない「医療難民」、貧窮する「下流老人」が増え続けていることがテレビや新聞、週刊誌などのメディアでしばしば取り上げられ…

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