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空気を読み、調和を保つ…「タテマエ」にしかない性質
このように、リップサービスとホワイトライは、いずれも「本音とは異なることを言う」という点で日本の「建て前」と似ています。それでは、なぜ「建て前」が「タテマエ」という英語になったのでしょうか。
その理由は、建て前がリップサービスやホワイトライとは本質的に異なる性質を持つからです。
日本の建て前は、文化的に内面化された行動様式です。場の調和を保つことそのものが目的であり、必ずしも意図的・戦略的に使われているとは限りません。「前向きに検討します」は、典型的な建て前表現です。これは結論の先延ばしや意思決定の回避につながり、実務の効率を下げてしまうこともあります。
一方、リップサービスやホワイトライは、目的に応じて使い分けられる戦術的なコミュニケーションです。発言の裏にある意図は明確です。これは「空気を読むための反射的な反応」ではなく、「場をどう動かすか」という視点で使われています(図表)。
こうした違いのため、タテマエは海外の人にとって戸惑いの原因になります。「何のためにやっているのか分からない」「本当は何を考えているんだろう」と感じる人もいます。
一方、日本人が海外の人たちと仕事をするときには注意が必要です。単に即決や衝突を避けるためだけにタテマエを使うだけでは不十分です。目的に向かって場を動かすためには、リップサービスやホワイトライを使いこなす力も必要です。
ただし、リップサービスとホワイトライは目的が似ていることが多く、実際に使う人も、自分の発言がどちらなのかを明確に区別しながら使っているとは限りません。
そのため、両者の境界線は必ずしも明確ではなく、実際の会話では両方の性質を持つ発言が存在します。
木村 琢磨
博士
昭和女子大学 教授
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