シニアの投資リスクと現実
金融庁の『家計の金融行動に関する世論調査(令和5年)』によると、60代・二人以上世帯のうち、株式を保有している割合は36.3%、投資信託は28.4%にのぼります。
一方で、株式投資には以下のようなリスクがあります:
●市場変動リスク 景気や金利、為替などで株価が大きく変動する
●情報過多・誤認リスク SNSや掲示板の噂を鵜呑みにし、冷静な判断を失う
●流動性リスク 売りたい時に売れない・大きく値を下げてしまう恐れ
●課税リスク 損益通算や確定申告をしないと余計な税負担になることも
特に老後資金として貯めた資産は「減らさない設計」が前提のはずが、「増やしたい欲」が強まると、リスクの大きな商品に手を出してしまう傾向があると、ファイナンシャル・プランナーは指摘します。
「一番の失敗は、家族に何も相談せず、孤独に“投資の沼”に入ってしまったことです」
信一さんは、恵子さんや娘夫婦には損失が確定するまで一切打ち明けていなかったといいます。
「“年金月35万円で十分足りる生活”だったのに、どうして株に走ったのか」と恵子さんは今でも割り切れない思いを抱えています。
老後資金は、夫婦で共有する「ライフプランの土台」です。どちらか一方の判断で大きく減らしてしまえば、金銭的リスクに加えて「信頼の揺らぎ」が生じることも少なくありません。
投資に正解はありません。しかし、老後の資産運用には「取り返す時間」がない以上、攻めすぎは取り返しのつかないリスクになります。
信一さんは最後にこう語ってくれました。
「今は、増やさなくていい。減らさないことを最優先にしています。あのときの教訓を、せめて人に伝えることで、少しでも意味があればいいですね」
“株なんて買うんじゃなかった”と後悔する前に──老後資金こそ、「安心を買う」ための資金であることを忘れてはいけません。
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