幹部・経営層の採用面接では、現場採用とは違う視点で見られています。これまでの実績だけでなく、価値観や意思決定の軸、経営に向き合う姿勢が問われるからです。本記事では、エグゼクティブ転職の専門家・井上和幸氏が、転職活動において「これが答えられなければ“不採用”になり得る」という4つの重要質問を紹介するとともに、その意図を解説します。
質問その2:「今回、現職(退職済みの場合は前職)を辞めたい(辞めた)理由は〇〇とのことですが、それ以外の理由を教えてください」
前述の通り、退職理由の多くは現職における不満であり、それはおかしなことではありません。ただし、念のため、考えていただきたいことがあります。
① 本当にそれが正当な退職理由か(そうだと相手が思うか?)
退職理由が「現職企業の経営者や上司のやり方が間違っている(自分の考えと合わない、違和感があるなど)」ということを、とうとうと語る幹部転職希望者は少なくありません。
そもそも、職場環境や経営の問題がある企業は多く存在します。幹部としてのそれなりの立場であるがゆえに、自社の内情が見えてしまったりということもあるでしょう。それを見て見ぬ振りはできない、コンプライアンス上のリスクもある、自分自身に火の粉が降ってくる可能性も……。
こうした事態に陥ったので転職したいという相談は、私も多く受けてきましたし、それが事実であればもちろん、現社から一刻も早く脱出すべきですねと、全力で新天地のご紹介をしています。
ただ、この「現職企業がおかしい」「自分の考えと合わない」「違和感がある」といった退職理由の場合、<間違っているのはあなたのほうかもしれない>ということを、念のため一度、冷静かつ客観的に、しっかり考えてみて欲しいのです。
現場の限られた視界からは正しく見えたり当たり前と思ったりしていることが、経営レベルの視界から見ると「それはまずい」「全体から見たらやるべきではない」というケースは決して少なくありません。自身の視座を一度客観的に見てみるとよいでしょう。
② 次に繋がる辞め方か、中途半端or自己中心的な退職理由ではないか?
状況の確認は終えました。では、あなたはそのことについて、社長や経営陣、上司にしっかり相談や提案、意見をしましたか?
仮に会社の間違った判断や行動があったとした場合、エグゼクティブという立場にありながら黙って見過ごしたのでは困ります。会社や部署のことを考えれば、改善改革の提案をできてこそ、有能な幹部・経営陣です。
実際、転職面談などでこういったことが現職で起きていると言われ、「社長や上司と相談してみましたか」と問うと、「いえ、まだ話をしていません」という回答がかなり多くの割合であります。
であれば、転職活動を始める前に(活動しながらでもよいですが)、まずは現職でしっかり対応してみたほうがよいです。
実際に、こうしたアドバイスをした転職相談者の何割かが、改めて社長や上司に相談や提案をしてみたところ、きちんと理解され、よい方向に向かい、現職に踏みとどまることになったケースもありました。
③「うちに来ても、同じことを言うんじゃないの?」
面接で現職への不満を語った場合、特に社長が面接相手のときは確実に、こう思われています。
「なんだ、この人、転職活動先のあちらこちらで、こんな現職の不満を言って回っているんだな。うちの会社だってパーフェクトじゃないし、色々強化したりテコ入れしたりしたいからこそ、幹部を採用したいと思っているのに。ということは、うちに入社しても、いずれ同じようなことを思って、俺には言わずに、外で言い回るようになるんだろうな」
――と。 採用結果は言わずもがな、ですよね。
株式会社 経営者JP
代表取締役社長・CEO
1966年群馬県生まれ。1989年早稲田大学政治経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。人材開発部、広報室、学び事業部企画室・インターネット推進室を経て、2000年に人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。2004年より株式会社リクルート・エックス(2006年に社名変更、現・リクルートエグゼクティブエージェント)。エグゼクティブコンサルタント、事業企画室長を経て、マネージングディレクターに就任。
2010年2月に株式会社 経営者JPを設立(2010年4月創業)、代表取締役社長・CEOに就任。経営者の人材・組織戦略顧問を務める。企業の経営人材採用支援・転職支援、経営組織コンサルティング、経営人材育成プログラムを提供している。人材コンサルタントとして「経営者力」「リーダーシップ力」「キャリア力」「転職力」を劇的に高める【成功方程式】の追究と伝道をライフワークとする。 実例・実践例から導き出された公式を、論理的に分かりやすく伝えながら、クライアントである企業・個人の個々の状況を的確に捉えた、スピーディなコンサルティング提供力に定評がある。自ら2万名超の経営者・経営幹部と対面してきた実績・実体験を持つ。
著書に『ずるいマネジメント 頑張らなくても、すごい成果がついてくる!』(SBクリエイティブ)、『社長になる人の条件』(日本実業出版社)、『ビジネスモデル×仕事術』(共著、日本実業出版社)、『5年後も会社から求められる人、捨てられる人』(遊タイム出版)、『知名度ゼロでも「この会社で働きたい」と思われる社長の採用ルール48』(共著、東洋経済新報社)、『あたりまえだけどなかなかできない 係長・主任のルール』(明日香出版社)、『プロフェッショナルリーダーの教科書』(共著、東洋経済新報社)、『人物鑑定法 あの人も、丸見えになる』(経済界)、『「社長のヘッドハンター」が教える成功法則』(サンマーク出版)など。取材・コメント・出演実績として、「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日刊工業新聞」「週刊東洋経済」「日経ビジネス」「GQ JAPAN」「週刊現代」「プレジデント」「AERA」「月刊BOSS」「CIRCUS」「日経ビジネスオンライン」「ITmediaエグゼクティブ」「BOSS online」、フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「キカナイトF」、その他業界誌等多数。
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