「元気にしてるよ」…そう言うけれど
「たまには帰ってきなさいよ」
何度そうLINEを送っても、24歳の一人息子・智也さん(仮名)は「大丈夫だから」としか返してこなかった。……そう話すのは、仙台市在住の53歳の母・千秋さん(仮名)です。
智也さんは大学卒業後、東京の中小企業に就職。月収は21万円ほどで、都内のワンルームマンションで一人暮らしをしています。
「入社から2年経っても、なかなか帰省してこないんです。電話もそっけなくて。体調を崩しているんじゃないかって、だんだん心配になって…」
いても立ってもいられなくなった千秋さんは、夫には内緒で新幹線に乗り、東京の息子の部屋へと“こっそり”向かいました。
日曜日の午後、息子のアパート前に着いた千秋さん。部屋には在宅の気配があり、思い切ってインターホンを鳴らしました。
「えっ…お母さん!?なんで…」
驚く智也さんをよそに、「ちょっとだけ。玄関まででいいから」と押し切って部屋に入った瞬間、千秋さんは言葉を失いました。
部屋全体に生活感がない。というより、まるで“暮らしていない”ような空間だったのです。
冷蔵庫の中はコンビニの水と栄養ドリンクのみ。電子レンジの上には食べかけのカップ焼きそばが。洗濯物は溜まりっぱなし、机の上には空になったカフェイン錠剤のパッケージも。
「…あんた、ちゃんと食べてるの?」
智也さんの話を聞くうちに、状況は明らかになってきました。
「朝は抜いて、昼はコンビニでサンドイッチとか。夜はスーパーの総菜とか、たまに抜いたりしてる。慣れれば平気だよ」
手取りは17万円程度。都内で家賃6万円台の物件に住み、通信費や交通費、交際費を差し引くと、月の食費は2万円を切ることもあるといいます。
「飲み会や昼食を断るのは、最初はちょっと恥ずかしかった。でも今はもう慣れた。貯金はしてるし、何とかやってるよ」
