おばあちゃんの家に「行きたくない」
神奈川県在住の会社員・藤原健太さん(仮名・45歳)は、年収約600万円。妻と小学4年生の息子・悠斗くん(仮名)の3人暮らしです。毎年正月には、長野県に住む藤原さんの実母・喜代子さん(仮名・76歳)の家へ帰省してきました。
「息子は小さいころから祖母に懐いていて、電話でも『早く会いたい』と話していたんです。今年もそのつもりで、『おばあちゃんの家に行くよ』と伝えたら、突然『行きたくない』と。最初は冗談かと思いました」
驚いた藤原さんが理由を尋ねると、息子は少し躊躇したあと、こうつぶやきました。
「だって…また、お金の話になるから」
藤原さんの母・喜代子さんは、夫に先立たれたあともひとりで暮らし、月に約12万円の年金で生活しています。いわゆる「年金生活者」で、車も手放し、日々の買い物も割引シールを見ながら慎重に行う日々だといいます。
そのため、毎年の帰省時にも「光熱費が上がって困る」「お金が足りなくて」などと繰り返し口にしていたそうです。さらに、孫に対しても「ゲームは高いから買ってもらえないのよ」「贅沢はできないの」と、“お金がない”ことを冗談交じりに話していたといいます。
「僕らは気にしていなかったけど、子どもなりに気をつかっていたんでしょうね。『長くいると迷惑なんじゃないか』って思っていたみたいです」と藤原さん。
特に昨年の帰省中、悠斗くんがコンビニで欲しいものを選んでいると、祖母が「そんな高いものを」と冗談混じりに伝えた場面がありました。息子の表情が少し硬くなっていたかもしれないと振り返ります。
「“お金がない”という言葉に、大人が思う以上の重みを感じたんだと思います。子どもって、空気を読むんですよね」
