マイルは原則「本人限定」の権利である
マイルは会員の口座にひもづくものであり、現金のように自動で相続されるわけではない。死亡時点で多くの航空会社では口座が凍結され、マイルの使用は原則として不可能だ。たとえ数十万マイルや数万ドル相当の価値があっても同様である。
そのため、遺族がマイルを引き継ぐには特別な手続きが必要であり、航空会社への書類提出や承認、手数料など、さまざまなハードルが存在する。
航空会社ごとの対応の違い
マイルの死後の対応には航空会社ごとに大きな差があり、対応に違いがあるようだ。
【アメリカン航空】【ユナイテッド航空】
マイルは死亡した本人にひもづくものであり、遺族へ自動的に移行されることはない。死亡証明書や遺族の身分証明書を提出すれば、航空会社の裁量で例外的に移行できる場合があるが、承認されるかどうかは保証されず、手続きは容易ではない。デルタ航空も同様で、死亡後のマイルは原則無効であるが、オフィサーの特別許可により例外的に利用できることがある。
【ジェットブルー】
生前にFamily Pooling制度を利用して家族でマイルをまとめておくと、会員死亡後もプール内のマイルを家族が使用できる仕組みである。ただし、Family Poolingの対象となる「家族」とは規約上、血縁または法的に認められた関係者に限られる。
【サウスウエスト航空】
アカウントが24ヵ月間非アクティブになるとマイルが失効する仕組みである。死亡時点で即失効するわけではないが、死亡後に放置すると期限切れで利用できなくなる点に注意が必要である。
【日本の航空会社】
各社事情が異なっている。全日空(ANA)や日本航空(JAL)では、法定相続人によるマイルの相続が認められており、死亡から一定期間内に必要書類を提出すればマイルを引き継ぐことができる。特に家族会員に登録しておけば、マイルを合算したり特典航空券に交換したりして死後も利用できる場合がある。ただし、相続後のマイルの有効期限には注意が必要だ。
遺族がマイルを有効活用できるように…生前にできる準備
日米の税金事情に詳しい奥村眞吾税理士は、マイルについて下記のように説明する。
「マイルは現金ではないですが、財産的価値がある場合、相続税の課税対象となり得ます。ANAやJALで法定相続人がマイルを引き継ぐ場合、そのマイルの評価額は通常、航空券購入に必要な現金換算額で計算されます。このため、1マイル=1円という計算もありますが、マイルをアップグレードに使用する場合もありますので、相続税評価額は異なる場合もあります。数十万マイルを相続する場合、評価額に応じて相続税が課されることもあるため、遺族が利用可能なマイルの数だけでなく、税額の負担についても把握しておく必要でしょう」
さらに、遺言書でマイルの相続者を明確にしておくことが重要だと奥村税理士はいう。
「航空会社への手続き時に有効な証拠となります。また、信頼できる家族や配偶者にアカウントのIDやパスワードを伝えておくことで、死後にマイルを使用したり特典航空券を発券したりすることが可能です」
ジェットブルーのFamily Poolingのような制度を利用し、家族でマイルをまとめておくことも有効だ。さらに、マイルを特典航空券や商品券に交換して現物化しておくと、遺族が迷わず活用できる。
マイル、規約・制度の定期的な確認が大切
マイルには有効期限や利用条件があり、長期保有では価値が失われる可能性がある。死亡後に移転や使用ができないリスクも存在するため、計画的な利用が推奨される。航空会社によっては、有料でマイルの有効期限を延長できる場合もあるため、定期的に規約や制度を確認しておきたいところだ。
マイルやポイントは遺族にとって潜在的に価値のある資産となり得るが、制度上は必ずしも遺産として認められるわけではない。死亡後のマイル移転は原則不可であり、例外的な手続きに限られる。航空会社ごとの対応の違いを理解し、手続きの難しさや期限、手数料、相続税の課税といったハードルを踏まえると、生前に家族会員制度の活用、遺言書の作成、特典交換など具体的な対策を講じておくことが重要だろう。旅行やショッピングの便利な資産として、死後の取り扱いも考慮した賢明な管理が求められそうだ。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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