(※写真はイメージです/PIXTA)

離れた場所に暮らす高齢の親の様子は、子どもにとって心配のタネです。そばで面倒が見られないからと、罪滅ぼしのつもりでなけなしのパート代を送り続けていたある50代女性は、ひょんなことから使い道を知り、ショックを受けてしまいます。シニア世代の悩ましいお金の問題を見ていきます。

「お母さん、なにか送るよ?」「いいの。迷惑かけられない…」

「お姉ちゃんには、もう迷惑かけられないから…」

 

世田谷区在住のパート主婦、田中裕美さん(仮名・50代)に、地方に暮らす母親・景子さん(仮名・70代)は、会話の中でしばしばこの言葉を口にします。

 

裕美さんは夫とふたり暮らし。子どもたちはすでに独立しています。いまは近所のスーパーマーケットでパート従業員をしており、月に12万円ほどを稼いでいます。

 

「父が亡くなってもう10年。母は地方の実家に独り暮らしです。でもこのインフレですから、年金だけでは生活がギリギリみたい。たまに電話をかけてきては〈つらい〉〈しんどい〉〈生活が大変〉などと愚痴るのです」

 

厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、70代後半・単身者の平均年金受給額は、厚生年金が約14万6,079円、国民年金:約5万8,018円。

 

裕美さんはそんな母親に、「お母さん大丈夫? 元気出して。なにかいるもの送ろうか?」などと声をかけていたのですが、母親は決まってか細い声で、「いいの。お姉ちゃんには、迷惑かけられないから…」と返すのでした。

 

「そういわれると心配になって、〈ほしいもの送るよ?〉と電話口で聞くのですが、なにも言わないんです。それで3万円ほどお金を送ったら、こっちが申し訳なくなるぐらい、お礼をいわれて…」

「〈お姉ちゃんにもらったお小遣いで、駅前の食堂でオムライスを食べた、ありがとう〉〈数年ぶりに美容院に行けた、ありがとう〉など泣きながら言うので、そんなに生活に困っていたのかと。だから、夫と相談して、毎月5万円を援助することにしたんです。3年前からです」

 

裕美さんの夫も、母親の生活を心配してくれたといいます。

 

「そもそも私がパートをしているのは、わが家の老後資金の足しにするため。パート代12万円のうちの5万円は大きいですが、そばで面倒を見られないので、致し方ないと…」

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