繁忙期、例年にはない動きのオークランド
日本では11月でも気温が高く半袖…と聞いたかと思えば、翌日には雪景色のニュース映像が流れるなど、異国の地であるニュージーランドからは、実情がよくつかみきれない今日この頃。北海道から沖縄まで縦長レイアウトの日本とはいえ、気候・温度の差に驚いています。
一方、南半球に位置するニュージーランド・オークランドも、陽が長くなってサマータイムに入り、晴れの日はようやく夏の陽気に。ところが、雨が降ると冬に逆戻りで、不動産視察も楽ではありません。
11月中旬を過ぎてクリスマスが近づいてくると、毎年、年内に家を購入したい「駆け込みホームバイヤー」が右往左往するようになります。
いままで販売が低迷していた新規開発プロジェクトも、価格を下げたことが一因でもありますが、ファーストホームバイヤーによるオープンホーム来訪数の増加を肌で感じます。
一方で残念なことに、シティーを中心としたアパートメントの販売は低迷中。価格を下げたところで、定例のオープンホームのスケジュールでは閑古鳥が鳴いています。
先月の記事『NZ不動産「ここ最近は、お得な物件探しができる」…「住宅ローン金利低下」「業者の新築物件の売れ残り回避策」が好影響』でもお伝えしたとおり、銀行金利が下がったことで投資家の勢いは復活傾向にあるものの、いまひとつ伸びが悪いのです。
オークションの売れ行きも、回復したといえ物件次第。勢いよく値を上げていく物件もあれば、結果が出ないものもあり、まだまだ市場の勢いは足りません。正直、マーケットの低迷からは脱皮したものの、絶好調とまではいかないのが今年の動きです。
ファーストホームバイヤー、「少しでもお得な物件」を精査
そんな状況のなか、ファーストホームバイヤーのみなさんは「少しでもお得な物件」を探して東奔西走しています。最近も、数ヵ月サポートを続けていたお客様に「やっと希望に叶う物件と巡り合いました!」とお墨付きをいただき、契約が成立へ。決め手はやはり新築物件です。
タウンハウスも、隣の家と壁を共有している長屋タイプではなく、一戸建てタイプの物件が人気です。しかし、長屋タイプでもデザインがよく、内部の質がよければみなさん選んでいきます。
今回成立したタウンハウスは、リビング、各部屋にエアコン付き。冷蔵庫も大型サイズが入る構造になっています。食洗器などの機材もヨーロッパのメーカー品を使用。部屋数が違うため厳密な比較とはいえませんが、2ベッドの物件でありながら、5ベッドで120万NZドル級の家と同等の室内スペック、それでいて金額は半額です。
2ベッドと5ベッドの物件、どちらもベッドルームはオーシャンビューですが、2ベッドの物件のほうがはっきり見えます。
また、同プロジェクトの部屋数が異なる〈3ベッドルーム/価格70万NZドル〉という物件が売り出されていて、「これは先日売れた120万NZの物件より、かなりお得かも…」と考えてしまい、筆者は葛藤しました。
先月売れた120万NZの物件というのは、一家4名のファミリーが購入した5ベッドルームですが、そのうちの2ベッドルームを人に貸すことを想定しています。
家族水入らずで住む3ベッドルーム70万NZドルと、賃借人を入れて住む5ベッドルームの二世帯住宅120万NZドル。はたして、どちらがいいのか…。
予算高め・部屋数多めの物件を購入、一部を賃貸するのがトレンド
最近では、予算より高めの物件を選び、1~2ベッドを賃貸に出して賃貸収入を得るというスタイルがあり、銀行もこの収入を見越して融資します。購入者は、大型物件に住めるうえ、将来的な資産価値向上の可能性もある、というわけです。
予算内の3ベッドルームの場合、立地や物件の広さが希望に沿わないと購入を迷いますが、そこに賃貸収入がプラスされれば、物件の資産価値も底上げされ、若干の不便には目をつぶることができます。物件にドアを追加し、完全分離の二世帯住宅として運営するのです。そこに気の置けない親族や知人に住んでもらい、家賃収入が得られればパーフェクトな状況です。
学区などがいまひとつなエリアに、単独購入で狭いマイホームを妥協して買うのではなく、エリアのいい大型物件を選択して一部を賃貸に出し、賃貸運営でローン返済を賄うというスタイルなら、いいエリアに住めるうえ価値の高い物件が手に入り、ウィンウィン状態です。ただし、入居者がなく家賃収入が得られければローン返済に影響が出てきますので、その点は要注意です。
筆者の知人はまさにその状況で悩んでいましたが、結果、大型物件購入に踏み切りました。夫婦それぞれの勤務先は遠くなるのですが、愛するお子さんのために、学区がよい地域に転居し「なんとしてでもテナントを入れて運営する!」といって頑張っています。
時代と共に変化する大都市オークランド
久しぶりに街へと足を運ぶと、いつのまにか住宅が壊され、開発が進む土地を多く目にすることになります。10戸長屋のタウンハウス建設がされたり、単独の家が3軒、4軒…と開発されていたりします。
まさに筆者の家の近隣でも、古い1戸建てが取り壊され、4軒の新築住宅を建築している真っ最中です。キッチンから見える風景が変わっていきます。
オークランドは1日のうちでも天気が目まぐるしく変わります。基礎工事が終わると、骨組み、屋根、外壁…と工程が進みますが、屋根の設置のタイミングで急な大雨に。屋根の上の作業員が一斉に消え、キッチンの窓から様子を見ていた筆者が「雨だから中止か…」と思っていたらお天気回復。いつの間にか作業員が持ち場につき、工事続行です。自宅キッチンにいながら学べる建築工法は、非常に興味深いものです。
大雨に何日もさらされている木造住宅の木枠。建築物に影響が出ないのか、心配・疑問が胸をよぎります。もっとも、雨だからといって家全体を幕で覆うことは不可能です。吹きさらしの中、天気が回復したら作業を再開し、内装工事へと進むのでしょう。筆者は完成した家を見るだけですから、整えられた完成物件の中の木枠、基礎部分の状態はわかりません。そういう意味でも建物検査は重要です。なかには「新築だから検査はいらない」といって回避する購入者の方もいますが、検査費を節約したことで問題が生じないよう、きちんと検査しましょうと繰り返し言い続けています。
多くは10年保証の保険がついているので、構造上の致命的な課題が出れば保険でカバーできますから、そんなに考えすぎなくても大丈夫なのですが、10年経過後に出る課題は自力で保険をかけなければならず、その点から、売却のタイミングも考えることが必要になります。
どうして、NZの人たちは頻繁に住み替えるのでしょうか。建物の質を考えながら、次の計画をすることが大切ですが、そう考えると、築50年、70年と経過している家はたくさんあります。昔の住宅のほうが頑丈にできており、木枠はそのまま、内装のみの改装で大丈夫な物件が多いのです。そう思うと、最近の住宅の質の低さが気になります。30年もつのだろうか、リフォームどころか、解体して建て直しが必要では…と。
宅地開発が進んで街が開け、人口も増えて活気がありますが、その反面、なんとなく安っぽい建造物が増え、街の風格が損なわれるようです。かつてのような石造り、コンクリート仕上げの重厚な建造物に、どうしても目が引きつけられます。
バイヤーの皆さんが夢見るマイホームも、個性が出せないタウンハウスが増えていますが、私たち業界の人間も知恵を絞り、住宅の品質はもちろん、そこに暮らす皆さんの暮らしを守っていければと思っています。
一色 良子
Goo Property NZ LTD 代表取締役社長
Harcourts 所属
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