(※写真はイメージです/PIXTA)

もしも突然、親が逝去した場合、遺族であり財産を受け継ぐ相続人は多くの手続きを行う必要があります。親が亡くなってからすべてを準備するのは、親族間の混乱や疲弊を招きかねないため、生前から準備を始めることが大切です。葬儀費用の負担配分なども、相続関連でのよくあるトラブルといえます。本記事では、廣木涼氏の著書『突然の看取りでも慌てない!亡くなった後の手続と相続のすべてがわかる本』(ソーテック社)より、相続における各種手続きや支払い関連について解説します。

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【Q&A】親族間で葬儀費用について揉めた際の捻出方法

Q.揉めないために葬儀費用はどこから出すのがいいですか?

 

A.葬儀費用は、相続においてトラブルになりやすい部分です。「誰がどれくらい負担するのか」「どこから支払うのか」「どの程度の費用をかけるのか」が不明確だと、不満や行き違いが生じやすくなります。そのため、事前に支払いの詳細を決めておくことが最善です。

 

法律上、葬儀費用を亡くなった方の財産から支払う義務があるわけではありませんが、実際には、多くのご家庭で葬儀費用は亡くなった方の預貯金などから支払われています。また、税務上は葬儀費用が相続税の債務控除の対象とされており、亡くなった方の財産から支払うのが一般的な取扱いとなっています。

 

また、亡くなった直後にすぐに口座が凍結されるわけではなく、銀行が亡くなったことを把握して初めて凍結されます。そのため、凍結前に引き出せてしまうケースもあります。実際に「葬儀費用のために、凍結前に下ろしておいたほうがいい」と知人などからすすめられ、先にまとまった金額を引き出す人も少なくありません。

 

確かに一時的には費用に充てられるメリットがありますが、後から他の相続人に「勝手に使ったのでは」と疑われ、トラブルになるリスクが非常に高いことを知っておく必要があります。特に、故人の判断能力が低下していた時期の出金は、贈与や不当な流用と見られることもあるため、基本的には避けるのが無難でしょう。

 

最も安心なのは、生前に「葬儀代としてこのお金を使ってほしい」とあらかじめ渡されていたり、「保険金から支払ってほしい」と意思を伝えられているケースです。資金の出どころが明確であれば、相続人同士で争いになる余地が少なく、手続きもスムーズに進みます。

 

そうでない場合には、誰かが立て替えたら領収書や支払明細を残し、費用の内訳を相続人全員で共有することが大切です。香典を葬儀費用に充てる場合や、式の中で配慮として渡したお心付け、細かい雑費なども「勝手に使ったのでは」と思われやすいため、簡単なメモでも記録を残しておくと安心です。

 

[図表4]葬儀費用の支払いは事前に決めておく

“ほふり”を知らないと株の相続でつまずく理由

株式を相続するとき、「どこで管理されているのか」を理解していないと、手続きでつまずいたり大切な財産を見落としてしまうことがあります。

 

上場株式は、2009年の株券電子化以降、すべて証券保管振替機構(ほふり)に登録され、証券会社を通じて相続手続きを行う必要があります。名義を相続人に移さなければ、配当を受け取ることも売却もできません。また、端株(単元未満株)は信託銀行などの株主名簿管理人が管理しており、証券会社に問い合わせても情報が出てこないことがあります。見落とすと手続きがより煩雑になる可能性がありますので注意が必要です。

 

一方、非上場株式は「ほふり」には登録されておらず、会社自身が管理する株主名簿に基づいて手続きを行います。持株会や親族の会社への出資株などは、家族が把握しておらず、調査から漏れると故人名義のまま残ってしまうケースもあります。

 

株式の相続手続きは、戸籍や遺産分割協議書など多くの書類が必要で、金融機関ごとに手続きも異なります。手続きをしないと配当を受け取ることも売却もできず、時間が経つほど整理は困難になります。相続を円滑に進めるには、「ほふり」や株主名簿管理人などの管理先を意識して調べ、必要に応じて専門家に相談することが大切です。“ほふり”の確認を怠ると、大切な財産を見落とすおそれがあるため注意しましょう。

 

 

廣木涼

司法書士法人アベリア代表

行政書士事務所アベリア代表

 

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※本連載は、廣木涼氏の著書『突然の看取りでも慌てない!亡くなった後の手続と相続のすべてがわかる本』(ソーテック社)より一部を抜粋・再編集したものです。

突然の看取りでも慌てない!亡くなった後の手続と相続のすべてがわかる本

突然の看取りでも慌てない!亡くなった後の手続と相続のすべてがわかる本

廣木 涼

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