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ドイツでは前工程と後工程の支援に最も力を入れる
ドイツには、さまざまな地方にさまざまな形態の産業クラスターがあるので、必ずしもすべてが同じ機能をもっているわけではない。大まかには以下のとおりだ。
ドイツの州政府産業振興部門直轄下の経済振興公社内には、産業クラスター専門の担当部署があり、州内のさまざまな産業クラスターを支援している。産業クラスターのトップは、クラスター・スポークスマンと呼ばれ、その下に事務を行う事務局長および事務局員が数名いる。クラスター・スポークスマンの職には、その地方の名士であり、「ああ、あの人か」とみんなが知っている人が就いている。
同職は地域の経済界をリードする役割なので、それだけの力量と尊敬を受けている人でないと務まらない。筆者が聞いた事例では、その地方の大学の元学長、有名な賞を受賞した功績のある研究者、その地方の最大企業の元社長などが務めていた。日本の地方では、こうした機関ができると、往々にして、県庁OBなどが再就職で居座ることになるが、ドイツではそうした事例はおよそ見当たらない。
産業クラスターの会員向けの活動としては、次のようなものがある。
•視察ツアー
•セミナー、ワークショップ
•会員向け情報発信(機関紙、メルマガなど)
•会員間の交流会
•政治・政府へのロビー活動
だが、活動の中で最も重要な分野は、企業活動の「前工程(=高い技術力をもった売れる製品の開発)」と「後工程(=世界に向けた販路開拓)」に対する“直接的”な支援である。
どんな産業クラスターであっても、先に挙げた活動がなくとも、この最も重要な前工程、後工程に対する支援の2つの活動は必ず存在し、最も力を入れている。日本の産業クラスターには、この2分野が決定的に欠けていた。だから失敗した、と言えるだろう。
ドイツにおける前工程への支援としては、主に次の2つがある。
1.研究所・大学との共同開発
2.企業同士の共同開発
支援機構としては、フラウンホーファー研究機構、工科大学がある。
一方、後工程となる海外販路開拓としては主に次の2つがあるが、地域によっては、産業クラスターの事務局自身が、海外販路開拓を支援しているところもある。
1.海外の商工会議所による、販路開拓に対する直接支援
2.地方政府傘下の経済振興公社による、外国の展示会出展支援
たとえば、ドイツ企業が製品を日本に輸出しようとする場合、日本での販路開拓、展示会出展などをサポートする駐日ドイツ機関は多くあり、州単位でも駐在機関を有している。
ドイツの「IfM Bonn」(Institut für Mittelstandsforschung Bonn=ボン中小企業研究所)によるアンケート調査(2020年)によれば、中小企業が零細企業や大企業と比較して、輸出に関して市場を拡大する手段としてより重要視しているのは、「展示会への参加」であり、次は「企業による各国訪問」である。
後述するとおり、ドイツは展示会発祥の国であり、いたる都市に展示会場があるが、それはまたドイツ中小企業のこうした展示会出展に対する意欲の反映であるとも言える。
